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【第38回】帰化と永住についての基本的事項・比較

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。

今回は、帰化と永住についての基本的な事項を比較等しながらご説明していこうと思います。

なお、今回は「基本的な」事項と銘打って書いていこうと思っていますので、全ての方に共通の条件や事柄では必ずしもありません。あくまでも一般的な条件等について書いていきますので、個別具体的な事項についてはお問い合わせいただければ幸いです。また、機会をみて、当該個別具体的な事項についてもブログで書こうとも思っています。

 

【帰化と永住の違い】

・一言でいってしまえば、以下のとおりです。

帰化 → 外国人から日本人になる。

永住 → 外国人のまま日本に永住する権利を取得できる。(国籍は変わらない

 

【メリット】

☆帰化の主なメリット☆

①日本人になる為、全て日本人と同様の扱いとなる。つまり、外国人特有の届出等の手続(住所を変更した場合の届出、配偶者と離婚した場合の届出、在留カードの更新等)から解放されます。

➁パスポートも日本のパスポートとなるため、海外旅行等が一部の諸外国に比べて楽に行けるようになる(査証免除国が多い等)。

③海外に行くときに、再入国許可(みなし再入国許可)を取得する必要がなくなる。

④活動条件もなくなる(合法でさえあれば、どんな仕事にも就ける)

 

☆永住の主なメリット☆

①母国の国籍や市民権を維持したまま、日本に住み続けることができる。

➁在留期限が無期限となるため、在留資格(ビザ)の変更や更新の猥雑な手続きは不要になる。

③活動条件もなくなる(合法でさえあれば、どんな仕事にも就ける)

 

【デメリット】

☆帰化の主なデメリット☆

①生まれ育った国・地域の国籍や市民権等を失う。(日本は二重国籍が原則認められていない)

 

☆永住の主なデメリット☆

①外国人であることには変わりがないため、外国人の特有の手続(届出等)は必要のまま。

➁永住とはいえ、退去強制事由・在留資格取消事由に該当した場合は、在留資格を取り消される可能性はある。

③在留資格の変更や更新の手続きは不要だが、在留カードの更新(免許証の更新のようなもの)は必要。

④海外に行くときは、永住者でも再入国許可又はみなし再入国許可が必要。

 

【申請先について】

帰化 → 法務局

永住 → 出入国在留管理局(入管)

・実は、帰化と永住では申請書の提出先が異なります。ただし、いずれも「法務省」管轄の組織であり、最終的な許可の判断は「法務大臣」が行います。従って、帰化申請をしつつ、別途永住許可申請をする、というような二重申請は、避けた方が無難です。なぜなら、法務大臣からしたら「こいつは日本人になりたいのか、なりたくないのかどっちやねん。」となり、審査が不利益に生じる可能性もあるからです。

【主な条件】

☆日本継続在留年数☆

帰化 → 5年以上

永住 → 10年以上

☆年齢要件☆

帰化 → 18歳以上

永住 → なし

☆素行要件☆

帰化 → あり

永住 → あり

☆生計維持能力☆

帰化 → あり

永住 → あり

☆国籍離脱要件(日本の国籍を取得したら、外国の国籍を失うという条件)☆

帰化 → あり

永住 → なし

☆利益公安関係(テロとかではない)☆

帰化 → あり

永住 → あり

☆税金・健康保険・年金等要件☆

帰化 → あり

永住 → あり

☆日本語能力要件☆

帰化 → あり

永住 → なし

 

・上記のうち、日本継続在留年数に関しては、帰化より永住の方が厳しくなっています。なお、この「在留」という概念は、その外国人が日本国内に物理的に存在している状態のみを指すものではありません。よって、たとえば、再入国許可を受けて母国等への帰国などで海外にいた期間も、「在留期間」に含まれます。ただし、その期間があまりにも長い場合については、帰化・永住ともに「中断」と判断されてしまい、日本継続在留年数要件を満たさないと判断される可能性があります。(この辺については、特に公表されていないので、専門家にご相談ください。)

・年齢要件は、帰化のみの要件であり、永住については制限はありません。また、帰化についても一定の条件に該当する外国人の方は、この年齢要件が課されません。これについては、またの機会に書ければいいなあと思っています。

・税金・健康保険・年金等要件​については、2019年以降、とても厳しくなりました。その厳しさは、原則として帰化・永住共に同等に厳しいと思っていただいてもいいかと思います。まず、未払・未加入は論外です。100%不許可です。また、期限遅れも原則不許可と言われています。また、同居の家族がいる場合に、申請する本人は完璧に納税等していても、配偶者等一部の者が未納である場合も予断を許しません。とにかく厳しいです。この部分に関しては、今後は通常の就労資格等でも厳しくなっていくことが予想されています。

・日本語能力については帰化のみが要件となります。厳密に言うと、法律上は日本語能力が必要とはどこにも書いてありません。しかし、実際には、法務局に出向いたときに日本語テストのようなものをされ、それが基準に達していないと申請すらできないという状態になります。具体的な、日本語テストの合格(例えば、日本語能力試験N4合格等)は不要ですが、法務局の担当官と一定程度以上日本語でコミュニケーションができることが必要とされているようです。

 

【提出書類】

帰化・永住、いずれも多いです。特に、帰化は、手続きの中でも「書類集め」が最も大変といわれています。原則として、専門家の助けを受けながら帰化許可申請をしたとしても、1回で提出書類がOKとなることは「ない」といってもいいかもしれません。数回にわたり追加資料を求められます。そういった意味では、永住より帰化の方が「書類集め」については大変と言えるかもしれません。

 

【行政書士による代理(取次含む)できる範囲】

帰化 → 申請書の作成、書類収集、法務局への同行

永住 → 申請書の作成、書類収集、入管への提出

・「帰化」については、「永住」と異なり「代理(取次)提出」ができません。つまり、本人出頭が絶対です。永住では、入管からお呼びがかからない限り、申請人である外国人本人が入管窓口に出向くことなく手続きを終了することができます。しかし、帰化は本人申請が必要なので、行政書士一人では書類の提出はできず、必ず本人が法務局へ行かなければばりません。さらに、1回の出頭では絶対に終わらず、だいたい4~5回出向くことが必要になります。

 

以上、「帰化」と「永住」の基本的事項について、主に比較しながら述べてきました。帰化・永住については奥の深い分野となりますので、今後もブログでなるべく深掘りして書いていければいいなあと思っています。

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。