loader image

【第63回】高度人材の受入れに関して

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士の竹内です。

先週1週間は、天気も悪く、しかも寒さがぶり返すという最悪の一週間でしたね。とはいえ、2月は1年で一番寒い時期(?)なので、当たり前と言えば当たり前なので、仕方ないですね。本日は、1週間のスタートにふさわしい快晴ですが、週の半ばにはまた天気が崩れそうですね。

そして、昨日くらいから鼻水がぐずり出してます…。花粉症でなければいいなあと心から思っております。

ということで、今週も行きましょう!

 

今回は「高度人材の受入れ」ということをテーマにして書いていこうと思います。これは、読んで字のごとく、日本が受け入れを認める専門・技術的な分野について優秀な人材の中でも、更に一定の条件を満たした者を「高度人材」として優遇して、その受け入れを推進しようということです。

2023年から新たな制度も開始されたので、その件も踏まえてみていきましょう。

 

【在留資格「高度専門職」について】

・高度人材の受入れのための在留資格として「高度専門職」という在留資格(ビザ)があります。これは、国(法務省令)で定める条件を満たす優秀な外国人材に、以下のような「優遇措置」を与えることによりその受け入れを促進しようという趣旨で始まった制度(在留資格)です。

・高度専門職には、4つの区分があります。高度専門職1号イ、高度専門職1号ロ、高度専門職1号ハ、そして高度専門職2号です。

・大雑把に説明すると、

高度専門職1号イ ⇒ 教授、研究の在留資格に対応する活動

高度専門職1号ロ ⇒ 技術・人文知識・国際業務(の国際業務除く)の在留資格に対応する活動

高度専門職1号ハ ⇒ 経営・管理の在留資格に対応する活動

で、特別な条件を備える人のための在留資格(ビザ)と考えていただければと思います。

※上記に列挙した在留資格については、以前ブログで説明していますのでそちらで確認してみてください。

【優遇措置】

★高度専門職1号イロハ共通★

①複合的な在留活動の許容

②在留期間5年の一律付与※1

③永住許可要件の大幅緩和※2

④配偶者の就労※3

⑤(一定の条件下での)親の帯同※4

⑥(一定の条件下での)家事使用人の帯同

⑦入国・在留手続きの優先処理

 

★高度専門職2号★

①高度専門職1号の在留資格の活動と合わせて行う限りにおいて、就労制限がほぼなくなる。

②在留期限が無期限となる。

③上記高度専門職1号の優遇措置の「③~⑥」までの優遇措置が受けられる。

 

※1 高度専門職1号(イロハ)の在留期間は5年です。1年や3年になることはなく、必ず5年付与されるため、長期間の在留期間が欲しい場合は、高度専門職の在留資格(ビザ)に該当しないかどうか確認してみるのも必要です。

※2 永住許可を取得するためには、原則10年以上日本で在留していなければなりませんが、高度専門職外国人は、3年、場合によっては1年の在留だけで永住許可申請が可能になります。

※3 例えば、技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)を持つ外国人の配偶者は、家族滞在という在留資格が付与されます。この家族滞在は、原則「就労不可」であり、資格外活動許可を受けることにより「1週間に28時間以内」のアルバイト等ができるようになります。しかし、高度専門職の在留資格を持つ外国人の配偶者は、特定活動(告示33号)の在留資格を受けることができ、通常必要となる学歴や職歴等の要件を満たさなくとも、技術・人文知識・国際業務や教育等の一部の就労資格に該当する職に就くことが許されます。

※4 日本の在留資格制度上、配偶者(妻、夫)や子を呼び寄せる制度はありますが、実は「親」を呼び寄せることは原則的に不可能です(告示外特活として、一定の条件下で親を呼べる場合もあります)。ただし、この高度専門職の在留資格だけは、例外的に一定の条件下で親を呼ぶこともできます。その条件は、世帯年収800万円以上であること、同居が必須であること、7歳未満の子がいてその養育のための在留等であることなどです。

・高度専門職2号は、高度専門職1号イ、ロ、ハのいずれかの在留資格を持って3年以上日本に在留した後に変更申請によって取得できる在留資格(ビザ)です。したがって、海外から新たに来た外国人の方が、いきなり高度専門職2号の在留資格を取得することはできません。

 

【ポイント制度】

・高度専門職の在留資格を得るためには、国(法務省令)が定める「ポイント計算表」において70点以上の点数を獲得できることが必要です。この「ポイント計算表」とは、例えば、学歴(博士なら30点、修士なら25点、学士なら20点等)、職歴(10年以上なら50点、7年以上なら45点等)、年収(3000万円いじょうなら〇点等)などの項目ごとに点数が定められており、その点数を合計して「70点以上」であれば、申請できます。

・ただし、高度専門職1号ロ、ハに関しては「最低報酬要件」が定められており、年収300万円に満たない場合は、上記のポイント計算表で70点以上獲得しても、高度専門職1号ロ、ハの在留資格は取得できません。裏を返せば、高度専門職1号イに関しては、最低報酬要件がないということです。

 

【高度専門職2号について】

・高度専門職2号への変更が許可されると、在留期間は無期限になります。したがって、退去強制事由・在留資格取消事由に該当すること等なく問題なく在留している限り、在留期間の更新手続きなどは不要です。しかし、「永住者」とは異なり、高度専門職は上述した収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動を行わなければならないため、仮に高度専門職2号の在留資格が取得できたとしても、6カ月間その在留資格に対応する活動を行っていない場合は、在留資格取消事由に該当しますので、注意が必要です。従って、退職した後も日本での在留を継続する場合には、永住者や他の在留資格への変更が必要となります。

 

【特別高度人材制度(J-Skip)】

・従来は上述のようにポイント制による高度専門職の在留資格付与制度が定められていましたが、2023年4月より、そのポイント制によらない高度人材受け入れ制度が開始されました。それが、特別高度人材(通称:J-Skip)です。

・この制度は、上記の高度専門職1号イロハの3つと同様の分類がなされており、それらにより満たすべき条件が異なります。​名称は、①高度学術研究活動​、②高度専門・技術活動​、③高度経営・管理活動​の3つです。

条件【①、②共通】

以下のいずれかを満たす方であること。
・修士号以上取得かつ年収2,000万円以上の方
・従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上の方

条件【③】

​・事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上かつ、年収4,000万円以上の方​

※つまり、上記の条件を満たせば、ポイント計算表による点数計算をすることなく、高度専門職1号の在留資格が得られます。なお、この制度で高度専門職1号の在留資格を取得した場合は、2号への変更のための期間が3年ではなく1年に短縮されます。(ただ、上記の条件は、従来のポイント計算表で計算してもおそらく70点以上は取得できるのではないかと思われます)

さらに、この制度は、従来の高度専門職1号の優遇措置に加え、永住許可までの継続在留年数要件が1年に短縮され、世帯年収3,000万円以上であれば、家事使用人を2人まで雇用でき、かなりの優遇がなされています。

 

以上、今回は「高度専門職」を中心に、我が国の高度人材受け入れ制度についてみてきました。少し遅いかもしれませんが、つい先日話題になったデジタルノマドへの在留資格許可の件含め、人材獲得競争がし烈化する中、日本もようやく高度人材の取得のために力を入れ始めた感はありますね。

最後までお読みいただきありがとうございました。