loader image

【第69回】定款

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。

いや~、暖かくなりましたね。今日は雨が降るとのことですが、先週末(4/7・8)は最高のお花見日和でしたね。私も、近くの杁ヶ池公園で散歩がてら桜を愛でてきました。

理屈抜きに、桜を見ると何とも言えない気分になりますよね。1年に1回この時季にしか見られないというはかなさが、心に染みるんですかね。

もう今週末には散り始めると思うと、やはりさみしいですね。

ということで、今週も行きましょう!

 

今回は会社シリーズの継続ということで、「定款」について触れていこうと思います。

 

【定款とは】

「定款」とは、会社を作成するためには絶対に必要となるものです。いわば、その会社の「憲法」のようなもので、会社の基本的事項や出資者、経営者などの情報から、会社のルール等いろいろなものが書かれています。そして、最低限記載しなければならない事項というのは有りますので、それさえ記載していれば、定款としては成立します。従って、会社によって何十枚にも及ぶ内容の濃い定款もあれば、1・2枚で終わる簡単な定款も存在します。

 

【定款へ記載する事項】

では、具体的に定款には何を記載すればいいのか?ということですが、大きく分けて3種類のカテゴリーからなります。

➀絶対的記載事項

➁相対的記載事項

③任意的記載事項

以上の3つのカテゴリーに分かれます。

まず、「①絶対的記載事項」ですが、これは読んで字のごとく、どのような会社でも定款に必ず記載しなければならない事項です。

そして「②相対的記載事項」です。これは、絶対的記載事項ではないものも、定款に記載しておかなければその効力を生じない事項です。この相対的記載事項をどのようにするかが、その会社の方針に大きな影響を及ぼすと言ってもいいでしょう。特に合同会社にあっては、大幅な定款自治が認められるため、かなり大事なものとなります。

最後に「③任意的記載事項」です。これは、定款に記載しておく必要はないものの、やすやすと変更したりされると困る事項等について、定款に記載することで一定の拘束力を持たせるものです。定款を変更する際には、一定の手続(原則:株式会社の場合は、株主総会、合同会社の場合は社員(出資者)全員の同意)が必要となるため、簡単には変更等ができなくなります。

 

【①絶対的記載事項】※以下、今回は「株式会社」の場合について書いていきます。

★「株式会社」の定款の絶対的記載事項

1.会社の事業の目的

2.会社の名前

3.会社の本店の所在地

4.設立時に出すお金等とその価額

5.発起人の氏名又は名称及び住所

6.発行可能株式総数

 

「1.事業の目的」についてです。これは、その会社が何をして利益を上げるか、ということです。そして、その目的は1つでも複数でも構いません。この目的は、登記事項(会社が設立するために必要となる登記手続きで登録する事項)でもあり、定款を変更すると、登記も変更することになるため、始めにしっかり決めておいた方がいいでしょう。この目的は、将来的にやる可能性がある業種をすべて羅列して多数の目的が定められているものもあれば、主たる業種+「前号に付帯関連する一切の事業」、又は「その他適法な一切の事業」などのようにシンプルなものもあります。

目的で注意することは、例えば許認可(例:古物商許可や旅行業許可その他の許認可)を必要とする事業の場合、その際に定款記載目的が抽象的だったり不適当だったりすると、許認可手続きで引っかかる可能性があるということです。また、あまりにも抽象的な目的だったり、たくさん目的がありすぎて一体何をやっている会社なんだ?と思われると、金融機関や取引先が取引等について慎重になる場合もあります。

そういったことも考えながら、目的は慎重に決める必要があります。

 

「3.会社の本店の所在地」は、いわゆる本社の所在する場所です。これは、住所全部を本店所在地としてもいいですし、最小行政区画まででもOKです。

愛知県長久手市〇〇1丁目1番地の1 コーポ長久手101号 ⇒ OK

愛知県長久手市 ⇒OK

上記はいずれもOKですが、前者でやる場合はとくに注意が必要です。この本店の所在地も登記事項です。なので、前者のように建物の部屋番号まで登記すると、例えば隣の部屋に引っ越すだけでも定款の変更と登記の変更が必要になります。

逆に、後者なら愛知県長久手市内の引っ越し(移動)であれば、定款変更も登記変更もいらないことになります。

実務上も後者が主流です。

 

「6.発行可能株式総数」は、将来的にその会社が発行できる株式の総数です。原則として、好きな発行株式数にすることができますが、公開会社(株式の全部又は一部に譲渡制限を書けていない会社)の場合は、会社を設立する際に発行する株式数が、発行可能株式総数の4分の1を下回ってはいけないなどのルールはあります。

 

【②相対的記載事項】

相対的記載事項は、たくさんありますので、代表的なものをいくつか列挙します。

1.株式の譲渡制限

2.現物出資

3.機関設計

4.種類株式

5.単元株式数

6.株式(紙の株券)の発行

 

「1.株式の譲渡制限」についてです。株式は、原則、自由に譲渡できます。つまり株主は、自分の持っている株式をいつでも、だれの許可もなく、好きな人に、好きなタイミングで譲渡(売却)できるのが原則です。例えば、ある会社の51%の株式を持っている人(以下、Aさん)がいるとします。そして、その会社が株式の譲渡制限を定めていない場合、このAさんが、いきなりその株式全部を第三者に売ってしまうことも許されることになり、その買主(新株主)の考え方によっては、経営陣の一新など会社の運営にとって極めて重要な事項が、簡単に変更されてしまう恐れがあります。

そこで、この株式の譲渡制限が力を発揮するのです。株式の譲渡制限は「譲渡を禁止する」のではなく、「株式の譲渡には会社の承認を要する」ということにするものです。先の例で、もし株式の譲渡制限があれば、Aさんは勝手に売却できず、その前に株式会社の承認を得る必要があります。

なお、株主から株式を売りたい旨の請求があった場合に、会社的に困る相手に売られる場合は、承認をせず、会社が指名する者への売却をさせたり、会社自ら買い取ることができます。ちなみに、「譲渡は承認しませんので、そのままあなたが株式を持ち続けなさい」というのはできません。

「2.現物出資」は、金銭以外の出資をする場合です。土地、建物、車、有価証券などを出資する場合は、定款に記載しておく必要があります。

「3.機関設計」ですが、株式会社の場合は、どんな形態であれ必ず設置しないといけない機関が2つあります。株主総会と取締役です。

したがって、それら以外の機関(監査役、取締役会、会計参与、会計監査人、各種委員会等)を置く場合には、定款に記載しておく必要があります。なお、株式会社における機関設計は複雑で、ある機関を設置したら、この機関も設置しなければならない、あるいは、あるタイプの会社だと、この機関を設置しなければならない等様々なルールが定められています。この機関設計に関しては、別の機会で触れたいと思っています。

「4.種類株式」とは、普通の株式ではない株式のことです。株式会社では、定款で定めることにより、内容(種類、権限等)の異なる2以上の種類の株式を発行することができます。先ほどの譲渡制限株式もその一つです。種類株式には、優先株式、劣後株式、黄金株等、9種類の種類株式が定められています。例えば、他の株式よりも配当を優先的に受けられる株式、その逆(優先的に受けられない株式)、会社が解散する際の残余財産の分配を優先的に受けられる株式(あるいはその逆)、拒否権付き株式(株主総会や取締役会の決議を拒否できる権限が付いた株式)等があります。これについても、また別の機会に書こうと思っています。

「5.単元株式数」についてです。通常は、1株1議決権、これが原則です。しかし、例えば、定款で「100株をもって1単元とし、これに満たない場合は株主総会における議決権を行使することができない」等と定めると、100株持ってない株主は、議決権を行使することができないなどの効果があるものです。この定めをしていない場合は、原則通り1株1議決権となります。ちなみに、単元株式数は1000及び発行済株式総数の200分の1に当たる数が上限とされている。

最後に「6.株式(紙の株券)の発行​」です。原則は、株券は発行されません。つまり、定款に「株券を発行する」と書かない限り、紙の株券は発行しないこととなります。現在はこちらが主流ですが、昔はよくドラマで金庫にしまってある株券が出てきてましたよね。

 

【③任意的記載事項】

最後は、任意的記載事項ですね。これは、先ほど述べた通り「記載することによって一定の拘束力を持たせたい」事項です。代表的なのは、事業年度、役員数、定時株主総会の時期などですね。

 

以上、今回は会社(今回は株式会社)の基本ルールとなる「定款」について書いてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。