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【第70回】株式会社の機関設計

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。

桜もほぼ散ってしまいましたね。地域によってはこれからのところもあると思いますが、一瞬で桜シーズンが終わってしまった感じです。そして、完全に春の陽気になってきましたね。日中は、半そででも行けるくらいの暖かさで、今日は夏日近くまで気温が上がるようです。

あっという間に、夏が来て、いつの間にか1年終わってしまうと思うと、時の流れの早さを嫌でも感じますね。

というわけで、今週も頑張っていきましょうか!

 

今回も、まだまだ続きます「会社シリーズ」です。今回は、会社の中でも株式会社の「機関」について書いていこうと思います。いわゆる、取締役や株主総会等というものについてですね。

 

【そもそも「機関」とは?】

株式会社の機関、といいますが、そもそも「機関」とは何かということから触れていきます。

まず、会社は、法律上私達人間と同じ扱いです。つまり、会社は法律上の人(=法人)です。つまり、会社も私達人間(自然人といいます)と同じ権利(何かを請求したり、得られる)や義務を持っています。しかし、絶対に私達自然人にしかできないことがいくつもあります。その一つが、会社を経営したり、物事を決定することなどです。つまり、会社=法律上の人間ですが、実際に意思や感情を持っているわけではないので、会社における意思決定や会社の運営は自然人にしかできません。その為に、会社に置かれるものが「機関」と呼ばれるもので、それは自然人(個人)であったり、会議隊だったりします。

【株式会社の「機関」】

具体的な機関は、株主総会(種類株主総会)、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、執行役、監査等委員会、指名委員会等(指名委員会、監査委員会、報酬委員会)があります。

 

【株式会社の機関設計】

まず、株式会社を設立するに当たって設置する機関として「絶対に設置しなければならない機関」と「任意に設置することができる機関」の2種類があります。

前者、つまり「絶対に設置しなければならない機関」は2つです。それは「株主総会」と「取締役」です。この2つの機関については、どのような株式会社でも必ず設置されます。逆に言えば、株主総会がない株式会社や、取締役のいない株式会社は絶対に存在しません。

 

【場合によって設置が強制される機関】

上記の株主総会と取締役の2つは、どのような株式会社でも設置が義務付けられていますが、会社法では、○○を設置した場合は△△を設置しなさい、□□のような会社であれば××を設置しなさい、というように、一定の場合には一定の機関を置け、というルールも定められています。

例えば、

・取締役会を設置すると、原則として、監査役の設置が義務付けられる。

・指名委員会等設置会社においては、執行役が必須。

などです。

そして、機関設計において大きな影響を及ぼすのが、大会社か否か・公開会社か非公開会社かの2点です。

「大会社」とは、「資本金が5億円以上」又は(直近の決算における)「負債総額が200億円以上」の会社をいいます。なんで負債総額が多い会社が大会社なの?という疑問があるかもしれませんが、そもそもある程度の信頼や実績がないとここまでの額の負債はかかえられないからです。

「公開会社」とは、発行している株式の一部でも株式譲渡制限をしていない会社、

「非公開会社」は、↑の逆、つまり発行しているすべての株式に譲渡制限を設けている会社です。

・機関設計においては、大会社かつ公開会社は規制が厳しく、逆に、非大会社かつ非公開会社は規制が緩いということができます。

例えば、公開会社は、株式の譲渡が自由であるため、頻繁に株主が変わったりします。株主総会をいちいち開いて会社の業務について決定するのは合理的ではないため、必ず「取締役会」を設置しなければなりません。要するに、株主が会社経営に関与しにくいため、取締役会が必置とされています。

また、上述した「取締役会設置会社の監査役設置義務」も、取締役会の権限が大きくなる(言い換えれば、株主総会の権限が小さくなる)ために、監査役を置いてチェックさせる、という意味合いでそのように決められています。(※なお、委員会型の会社【監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社】の場合は、監査委員会又は監査等委員会が代わりに置かれるため、監査役は置けません)

また、例外的に「非公開会社」が「会計参与」を設置する場合に限っては、取締役会設置会社であっても監査役の設置は不要です。

「大会社」については、会計監査人を設置する義務があります。そもそも「会計監査人」とは、会計のスペシャリストであって、かつ、会社外部の公認会計士(又は監査法人)しか就任することができません。「大会社」は、一般的に会計が複雑になることが通常であり、かつ、債権者等の利害関係者も多数存在するため、この会計スペシャリストである「会計監査人」の設置を義務付け、外部の人間による会計のチェックをさせることとしているのです。

次に、上述した「会計監査人」を設置する会社には「監査役」の設置が必要です(委員会型の会社は例外。監査役の代わりに監査等委員会又は監査委員会が置かれる)。これは、なぜかというと、会計監査人は、経営陣(取締役や執行役等)とは独立した外部の人間であり、その選任・就任を経営陣に決めさせるのはおかしいため、その選任・就任を会計監査人同様、経営陣をチェックする役割を担う監査役(監査等委員会・監査委員会)が決定することと定められているからです。

その他、委員会型の会社(指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社)の場合には、取締役会の設置義務、監査役を置けない(役割重複を防ぐため)、会計監査人の設置義務、監査等委員会設置会社は指名委員会等を置けない(両方同時選択不可)などが定められています。

そして、もっとも規制の厳しい「公開会社かつ大会社」については、監査役会・監査等委員会・指名委員会等のいずれかを設置する必要があります。これは、監査・監督の重要性が高いためです。これに加えて、上述したように、公開会社=取締役会必置、大会社=会計監査人必置の義務もあります。

従って、公開会社かつ大会社の機関設計は、株主総会と取締役(と会計参与)を除き、

①取締役会+監査役会+会計監査人

➁取締役会+監査等委員会+会計監査人

③取締役会+指名委員会等+会計監査人

のいずれかのパターンしかない。

 

ちなみに、いわゆる上場企業は、公開大会社でなくとも、監査役会・監査等委員会・指名委員会等のいずれかを設置しなければなりません(東証上場規程)。

 

以上、今回は「株式会社の機関設計」について書いてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。