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【第80回】変態設立事項

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。

早いもので6月も三週目に入りますね。今日は久々に雨模様ですが、そろそろ長久手周辺も梅雨入りですかね。じめじめとした嫌な時期が来ますね・・・。

でも、梅雨を乗り切れば1年で一番好きな季節が来ます!(冬が一番嫌い。夏が好きな理由はテキトーに薄着来てればいいから)

それまでの辛抱です。頑張りましょう!

ということで、今週も行きましょう。

 

今週もまだ会社シリーズのつづきです。

今回は「変態設立事項」というものについて簡単に解説していきたいと思います。私は、初めてこの言葉を見たとき「変態!?」と、若干変な想像をしてしまったことを否定しません。

ちなみに、この「変態設立事項」の「変態」は、ドイツ語が語源のようで、意味としては「特殊な」というような意味だそうです。

 

【変態設立事項って何?】

・定款の記載事項として、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3つがあるというのは以前のブログ(【第69回】定款​など)でも触れましたが、この「変態設立事項」は「相対的記載事項」の一つです。

したがって、定款に記載しなければ効力を生じない事項ということになります。つまり、絶対的記載事項ではないので、定款に変態設立事項を記載しなくても、定款認証自体は受けられますが、その効力は生じないということになります。

・「変態設立事項」とは、一言でいうと、会社にとって必要・有益な行為ではあるものの、それを一切の規制なしに認めてしまうと、その濫用により不利益が生じてしまう可能性が高い事項と言えます。例えば、実際は100万円の車を出資(現物出資)したにもかかわらず、その評価額を1,000万円の出資として評価してしまえば、他の株主(出資者)や債権者(取引先等)にとって思わぬ損害を受ける可能性があります。

 

【変態設立事項の種類】

①現物出資

➁財産引受

③設立に際して発起人が受ける特別の利益

④設立費用

以上の4つがあります。順々に解説します。

 

【①現物出資】

現物出資とは、金銭以外の出資です。不動産、自動車や機械等のお金以外のもので会社が必要とするものを出資することを現物出資と言います。

会社設立時においてこの現物出資をすることができるのは発起人に限られます。

金銭は、その額が明らかです。しかし、現物出資の場合は、その価値(その現物がいくらくらいの金銭的価値があるのか)がわからない場合もあります。そのために、前述のような問題が生じるケースがでてくるのです。

その解決のために、この現物出資に関しては、定款で一定の事項を記載するとともに、検査役という人の調査を受ける必要があります。これにより、現物の評価の正当性を確保しているのです。

なお、一定の場合にはこの検査薬の調査を省略できる場合もあります。(後述)

 

【②財産引受】

財産引受とは、今設立中の会社の事業をスムーズに行うために必要なものを、発起人以外の第三者が所有している場合に、会社設立を停止条件(会社が設立したら効力が発生するという条件)として、そのものを譲り受ける旨の契約のことを言います。

例えば、AさんがX株式会社を設立する際に、Bさん(知人)が業務に必要不可欠となる重要な機器を持っている場合に、AさんがBさんと「X株式会社が成立した際には、その機器をください(売ってください、〇〇と交換してください、貸してください)」という契約を結び、会社が成立した際には約束通りその機器を譲り受ける、というものです。

この財産引受は、現物出資と似ていますが、発起人以外の第三者との間で行うことができる点で大きく異なります。

そして、この財産引受についても、現物出資と同様に、原則として検査役の調査が必要となります。

 

【③設立に際して発起人が受ける特別の利益​】

株式会社の設立後に行った業務(つまり、通常の仕事)であれば、労務の対価として給与や報酬を受けられますが、会社が設立されていない(会社として法人格がない)状態ではそれがどうなるか、という問題があります。発起人は、会社の設立のために労務を提供することになりますので、それに対して(成立後の)会社に対して報酬等を請求することは至極当然のことと言えます。

そこで、その報酬について定款に記載しておきなさいというのが、この「設立に際して発起人が受ける特別の利益」です。これも、一定の制限を加えておかないと、例えば、とんでもない報酬額を発起人に与える可能性があり、結果として成立後の会社や株主、会社債権者等に不利益を及ぼす可能性があります。

それを避けるため、一定の事項を定款に記載させ、かつ、検査薬の調査を受けさせることとされています。

これは、裏を返せば、定款に「設立に際して発起人が受ける特別の利益」を記載していない場合は、発起人はその労務の提供に対する報酬を受けられなくなるので注意が必要となります。次に述べる「④設立費用​」についても同様です。

 

【④設立費用​】

これは読んで字のごとく、株式会社の設立のために必要となった費用です。

例えば、事務処理のための交通費や通信費から募集設立の場合の創立総会にかかった費用、設立事務のための事務所を賃貸した場合の賃料等といった費用です。

こういった費用に関しても、何も定款で定めていないと、とんでもない請求額となってしまい、結果として会社等に損害を与える可能性があるために、相対的記載事項とされているのです。なお、定款で定めるのは、これらの費用の「総額」です。

ちなみに、定款認証の手数料や、検査役の調査にかかる費用、設立登記の登録免許税等のように、ある程度その額が決まっているものに関しては、仮に定款に記載されていなくとも、成立後の会社で費用処理できることにはなっています。

 

【検査役の調査について】

以上で見たきたような「変態設立事項」は、濫用される=不利益が生じる、という性質のものであるために、第三者である「検査役」がその調査をすることにより、現物出資や財産引受の評価額の公正を保つこととされています。

この検査役は、裁判所に申し立てをして選任してもらう必要があり、弁護士が選任されることが多いようです。

この報酬に関しては、裁判所が決定し、成立後にその会社が支払うという流れになっています。

この検査役が、調査をし、価格が高すぎる!と判定されたり、逆に安すぎる!と判断されたような場合には、それに応じて価額の変更及び設立時発行株式の引受数を変更することになります。

 

以上、今回は株式会社の定款記載事項の3種類のうちの1つである「相対的記載事項」の代表格、変態設立事項に関して書いてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。