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【第87回】遺言の方式の選び方について

長久手市の在留資格(ビザ)と終活関連業務(相続・遺言・成年後見・死後事務)専門行政書士、竹内です。

 

オリンピックも終わり(パラリンピックはこれからですが)、お盆に突入しましたね。

と同時に、南海トラフがついに来そうで、びくびくしています。

でも、今朝久々に、庭に遊びに来る猫ちゃんの元気そうな姿を見ることができてテンションが上がりました。まだまだ夏本番ですが、熱中症に気を付け得ながら、今週も頑張っていきましょう!

 

今回も、引き続き終活シリーズですね。前回は遺言の種類についてご案内しました。今回は、それを踏まえて、ではどのようにして遺言の方式を選べばいいのか、ということに触れていきたいと思います。なので、前回のブログと被る内容もございますが、そこは知識の確認として捉えていただければ幸いです。

【大前提】

前回のブログでも触れましたが、基本的に、遺言は公正証書で作成する「公正証書遺言」を選択していただくのが一番です。

その理由は、前回のブログで述べましたので詳細はそちらに任せますが、要するに「確実」だからです。遺言をする一番の目的は、遺言者(亡くなった方・遺言を書く方)の意思を実現することにあるので、その意思が実現できない可能性はできる限り低くすべきです。

 

以下、この大前提がある上で、これを選択しない・できない場合において、いかにして遺言の方式(主に、自筆証書遺言)を選ぶべきか、という観点で書いていますのでよろしくお願いいたします。

 

【自筆証書遺言の選択の検討】

上述したように、遺言は、原則として「公正証書遺言」によるのが一番いいのですが、自筆証書遺言で作成するケースもあります。

その場合の大前提として、「自身で文字を書くことができる」必要があります。自筆証書遺言は、目録を除き、その全文(いわゆる遺言の本文にあたる部分)を遺言者本人が自書する必要があります。

その上で、以下のような方・ケースは、自筆証書遺言を選択してもさほど問題にはならない、或いは選択した方がいいと言えます。

・相続財産の内容がシンプル(預金と土地だけ等)

・相続人間の関係がとても良好(万一無効になっても当事者間に争いが生じるとは思えない等)※1

・自身の文字で、自身の思いを遺された人に伝えたい(例えば書道家等、文字がその人の人生そのものであるような場合は、自筆証書遺言を選んだ方が思いは伝わる可能性が高いと思います。)

・遺言にはお金をかけたくない

・遺言の保管場所が確保できる

※1 これについては、思わぬきっかけから関係悪化等の可能性があるので注意は必要です。

例えば、相続財産は預貯金のみであり、遺言作成にお金をかけたくないというような方は、公正証書遺言を無理やり作成しなくとも、自筆証書遺言で十分なケースもあります。

自筆証書遺言については、かねてから「保管」の問題が取りざたされていました。せっかく作成したのに厳重に保管しすぎて、遺言者の死後、相続人が遺言書を発見できない、又は、遺言書の存在を知らないまま遺産分割協議が行われるなどもよくあります。また、ある信頼していた相続人の1人に「遺言書があり、それは●●●に保管してある」と言伝しておいたら、その相続人が、その遺言書を偽造したり、破棄したりしてしまう(なお、遺言書の偽造や破棄は、相続人の欠格事由に該当し、相続人から除外されます)というようなケースもあります。

しかし、この自筆証書遺言の問題点であった「保管」について、国が新しい制度を開始しています。それが、「自筆証書遺言保管制度」です。この制度は、保管に若干のお金がかかること、必ず遺言者本人が法務局に出向く必要があることなど、若干のデメリットも発生してしまいますが、自筆証書遺言の保管という面では最強の保管方法と言えます。

この「自筆証書遺言保管制度」については、次回のブログで詳しく説明したいと思っております。

 

【秘密証書遺言の選択の検討】

これについては、現在の利用状況からもわかる通り、ほとんど一般的には使われていません。

遺言の内容を誰にも知られたくない場合は、この方式によることが考えられますが、基本的には他のチェック(公正証書の場合は公証人、自筆証書遺言で保管制度を使えば法務局の職員が形式のみはチェックしてくれる等)が全く入らないので、無効の可能性も高まります。

しかし、秘密証書遺言は、他人に書いてもらうことができること、パソコン等手書き以外の方法でも作成できること、という2つのメリットがあります。

これをうまく活用する方法も考え得ることになります。

 

例えば、弁護士や行政書士という専門家に頼んで原文を作成してもらう方法です。

この方法ですと、「誰にも知られずに」という願いはかないませんが、少なくとも相続人や親族に内容を知られることはありません。当然ながら、専門家には守秘義務がありますので、自分以外に漏らすことはありません。

なので、考え方によっては「一番ラク」な方法ともいえるかもしれません。

しかし、作成の為には公証役場が入ること、無効のリスクはゼロにはできないこと、保管に関しては「自筆証書遺言保管制度」のような制度はないこと、検認は100%必要であること等、リスクやデメリットはあります。

また、パソコン等で作った秘密証書遺言は、手書きのものより偽造や変造が容易ですので、一長一短な部分もあります。

弁護士や貸金庫に秘密証書遺言を保管してもらうという方法もありますが、費用も発生します。

 

秘密証書遺言を選択するケースとしては、どうしても遺言の内容は知られたくない遺言者で、作成(無効)のリスクや保管のリスクをクリアできる、という条件が満たせる場合には、選択の余地があると言えるでしょう。

 

以上、今回は「遺言の方式の選び方」について書いてきました。内容がけっこう前回と被ってしまったので申し訳なく思っております。何卒、ご容赦ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。