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【第90回】遺言の撤回・取消

長久手市の在留資格(ビザ)&終活関連業務(相続、遺言、成年後見、死後事務等)専門行政書士、竹内です。

早いものでもう9月ですね。長久手市は、昨日まで台風10号の影響で不安定な天候が続いておりましたが、本日は快晴。また真夏の日差しが照り返しております。

まあ、例年10月一杯までは暑いので、あと2箇月、暑さに耐えれば秋(また短い秋になりそうですが)が来ますね。夏好きの私にとっては、寂しい気持ちもありますが、暑すぎるのはいかがなものかと思う今日この頃です。

というわけで、今回も行きましょう。

 

今回も「終活シリーズ」の続きでいきます。今回は「遺言の撤回・取消」について簡単に書いていこうと思っています。

 

【遺言の撤回・取消はそもそもできるの?】

これは、もちろん可能です。何回でもできます。

民法1022条の条文でも「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。​」と明記されています。

ただし、もちろん前提条件はあります。これは以前のブログでも述べたかと思いますが、遺言をする人(以下、遺言者といいます。)は、遺言をする時において、その能力(以下、遺言能力といいます。)を有していなければなりません。

つまり、いくら何回も撤回・取消しができるからと言っても、遺言者自身に遺言能力がなくなってしまえば、もう撤回・取消はできなくなってしまいます。なので、遺言をする際は、もう撤回等がないよう真剣に考えてやるようにすべきではあります。

ここで、上記条文中に出てくる「遺言の方式に従って」という言葉について説明します。

これは、例えば、遺言者Aさんがまず自筆証書遺言を作成して、自ら保管していたとします。その後、しばらくして、Aさんは遺言の内容を変更したいと思うようになります。この場合において、Aさんはこの遺言の撤回・取消を以下のいずれの方法によることも可能です。

➀ 前回の遺言書を破棄して、新しく自筆証書遺言を作成する。

➁ 前回の遺言書を破棄して、新しい遺言を公正証書遺言又は秘密証書遺言という別の方式で作成する。

つまり「遺言の方式に従って」とは、変更前の遺言方式と同じ遺言方式によらなければならないのではなく、新たに作成する遺言が、法定されている(法律で定められている)方式に従って作成されるのであれば、別の方式でも撤回・訂正・変更できる、という意味です。

 

【遺言の重複の扱い】

もし、ある方が亡くなった場合に、遺言書が2つ以上発見されたときはどのような取り扱いになるのでしょうか?

これについて民法では次のような定めがあります。

民法1023条「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。​」

つまり、後の日付で作成されたものが正式な遺言書として採用されることになります。

注意としては、上記1023条の条文の中の「その抵触する部分については」という表現です。

例えば、前の遺言に「A不動産はXへ相続させる。B預金口座はYへ相続させる。C銀行口座はZへ遺贈する。」と記載されていたとします。そして、後の遺言書には「A不動産はYに相続させる。B預金口座はⅩへ相続させる。」とだけあったとします。

この場合は、後の遺言の「AをYに相続させる」「BをXへ相続させる」という部分が有効になるとともに、前の遺言にある「CにZを遺贈する」という部分も有効になります。

これは上記1023条の反対解釈で、「抵触しない部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされない」と言えるからです。

 

【撤回された遺言の効力】

なお、一度撤回された遺言の効力は、原則として復活はしません。例外的に、錯誤(勘違い)や詐欺・強迫によってなされた遺言の撤回については効力を回復できます。

ちなみに、遺言者が「故意に」遺言書を破棄した場合には、遺言の撤回とみなされます。

これも注意が必要で、遺言の撤回とみなされるのは「故意」のみで「過失」による遺言書の破棄は撤回とはみなされません。

例えば、遺言者が自分の意思で遺言書を破棄した場合は、遺言の撤回となりますが、遺言者が自分の意思ではあるものの、捨てようと思った書類と間違えて遺言書を破棄したような場合は撤回とはなりません。

 

以上、簡単ではありますが「遺言の撤回・取消」について書いてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。