長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。
早いもので9月も最終日ですね。連休明けからいきなり涼しくなって、今では早朝は半袖だと若干肌寒さも感じるようになってきました。
例年感じていることですが、秋は短いと思われるので、すぐ大嫌いな冬が来ますね。
また何とか寒くて暗い冬を乗り越えましょう!
では、今週も行きましょう。
今週は、前回から唐突に始めた外国人関連業務シリーズのつづきです。前回は「デジタルノマド」の在留資格について書きましたが、今回は令和5年入管法改正で始まった「補完的保護対象者」の制度について簡単に書いていこうと思います。
【補完的保護対象者って何?】
一言でいと、「難民に準ずる地位にある者」です。もっとくだけて書くと「難民と同じように扱われる者」です。
ご存じのとおり、日本では難民の認定申請をしても、ほとんどが許可されてきていません。昨年(令和5年)は、これまでで最多の認定数であったとはいえ、その数は303人です。認定申請数が13,823人ですのでいかに認定されるのが困難であるかというのがお分かりいただけるかと思います(出入国在留管理庁公式ホームページ参照)。
そこでこの「補完的保護対象者」という制度が生まれました。
これは「難民」としては認定することはできないものの、難民に相当する状況にある者に対し「補完的保護対象者」として認定し、原則として在留資格(定住者が想定)を与えて、日本での永久的な在留及びその者の保護を可能にすることを目的とした制度です。
【結局、どういう人が補完的保護対象者として認められるのか?】
前提:「難民」に該当しない者であること。※制度概要の説明のため、これについての詳細は今回は省きます。
前提:個別の事情を考慮して、個々のケースごとに該当性(対象となるかならないか)を判断する。
①本国が内戦状態・戦争状態にあり、帰国すれば殺害又は死刑にされる等のおそれがある者
②帰国すれば非人道的な刑罰や扱いを受けるおそれがある者
③国自体が、国民を保護することが到底できない状況にあり、無差別の暴力などが蔓延っている。
その他、もろもろの事情を個別的に判断して、認定の可否が決定されます。
現時点で、この補完的保護対象者として認められているのはウクライナ避難民です。
それ以外は、まだこの制度自体が効果的に機能しているとは言えない状況であり、今後この制度がどのように利用されていくかは注視していく必要があります。
いずれにせよ、「難民認定≒補完的保護対象者認定」という関係であることは明白ですので、認定を得るのは現時点では難しいと言えると思います。
【補完的保護対象者になるためにはどういう手続きが必要なのか?】
前提:日本に居る外国人であること。
①補完的保護対象者認定申請をし、認定を受ける。
②難民認定申請をして不認定となったが、補完的保護対象者としては認定される。
【補完的保護対象者制度の創設に伴う在留特別許可制度の変更点】
以前までは、
難民認定申請 → 不認定 → が、法務大臣の判断で在留特別許可 → 在留資格取得
というケースで結果的に在留資格を取得することができることもありました。
しかし、今回の改正で「難民認定手続きにおける在留特別許可」という制度はなくなりました。
すなわち、
難民認定申請 → 不認定 → 退去強制手続き → 申請又は法相判断で在留特別許可 →在留資格取得
というように、難民不認定者でも在留資格を取得できる場合の流れが変更されています。
ようするに「難民認定申請における在留特別許可」というものを廃止し、難民認定手続きと在留特別許可を完全に分離する、という制度上の変更がなされました。
【補完的保護対象者として認定された場合の在留資格】
原則:定住者の在留資格の取得(羈束行為。つまり、除外規定に該当しない限り必ず許可される)
例外
① 既に就労資格や居住資格等の在留資格を持っている人等 → そのままの在留資格で在留継続
② 一定の退去強制事由のいずれかに該当する者であるとき → 下記「②・③」参照
③ 日本に来た後に、一定の罪を犯して、拘禁刑に処せられた者 → 下記「②・③」参照
・「①」については、そもそも在留資格を既に所持しているため、改めて「定住者」の在留資格を与える必要がないためです。難民認定申請や補完的保護対象者認定申請をする外国人だからといって皆さん在留資格がない、というわけではないです。
・「②・③」は、難民又は補完的保護対象者として認定はできるが、素行が著しく良くないため日本での在留は認められないということです。認定はするが、在留は認めない、というケースです。
【仮滞在の許可】
難民の認定申請や補完的保護対象者の認定申請では、基本的に結果が出るまで何カ月もかかることがありますので、その間適法に日本に滞在するために、法務大臣はこれらの申請をした外国人には、原則として「仮滞在の許可」というものをします。これも羈束行為です。もちろん、一定の条件に該当する場合には当該許可をしないという規定もあります(素行が著しく不良な場合、上陸後長期間経過後に申請した場合、そもそも他の制度により在留することができる場合等)
以上、今回は「補完的保護対象者」及びそれに関連する制度について本当に簡単に説明しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。