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【第103回】任意後見人の仕事と義務

長久手市の在留資格(ビザ)&終活関連業務(相続、遺言、成年後見、死後事務等)専門行政書士の竹内です。

寒くなってきましたね。私の大嫌いな冬がついに到来してしまいました。

先日は、中山美穂さんが亡くなられたということで、本当の原因はわかりませんが、ヒートショックという言葉がちらほら出ていて、他人事ではないなぁと感じる今日この頃です。

それでは、今週もスタートです。

 

今回も「終活シリーズ」です。前回は任意後見人になれる人とその報酬について書きましたが、今回は、任意後見人の仕事と義務と題して、任意後見人の役割・仕事内容とそうでないもの、そして、任意後見人として仕事をする場合における義務について書いていこうと思います。

 

【任意後見人の仕事】

任意後見人の仕事は、本人(ここでは、任意後見人に世話を受ける人のことを指します)の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行います。

これではなんのこっちゃわからないと思いますので、以下具体的に挙げてみます。

任意後見人の仕事は大きく2つに分かれます。1つ目が「身上監護(=上記の「生活、療養看護」の部分)」、2つ目が「財産管理」です。

★身上監護に関する仕事の主な例

・介護施設や老人施設などへ入所するための契約の締結

・↑のための制度の調査や施設探し

・病院への入院の手続とその契約

・住居に関する事務手続き(不動産売却等の処分、賃貸契約締結等も含まれる)

 

★財産管理に関する仕事の例

・預貯金口座の管理(解約、払戻等含む)

・本人が賃貸不動産を所有している場合の、賃料収入等の管理・取立てその他の業務

・年金等の定期的な収入の管理

・生活に必要なお金の送金、日用品の購入に関する手続き

・本人に代わって遺産分割協議に参加すること

・保険契約の締結、変更、解除など

・通帳、実印その他重要なものの保管等

・税金の支払いや、本人に債務がある場合の返済手続き

 

などなどです。

 

【任意後見人の仕事ではないものの典型例】

1. 手術の同意

2. 延命治療の同意

3. 身元保証

4. 死後事務

5. 事実行為

 

「1.」は、例えば「がんを切除するための手術をすればよくなる可能性がある」と医師に言われた場合に、任意後見人が「ではお願いします。」というような回答をすることは、後見人としての権限を越えるものであるとされており、行うことはできないとされています。

「2.」延命治療に対する判断も、上記の「1.」同様認められていません。ただし、本人がもし延命治療を希望しない意思を持っている場合には、あらかじめ尊厳死宣言公正証書を作成しておくことで、この問題が解決できる可能性があります。

「3.」身元保証は、施設入所時などに求められるものです。任意後見人が身元保証人となった場合には、例えば、施設使用料を本人の預貯金で賄えなくなった場合に、任意後見人がそれを立て替えるというケースも想定されます。つまり、利益相反となる可能性があるため、任意後見人が身元保証をすることは不適切とされています。

「4.」死後事務についてですが、任意後見人の職務は、あくまでも「本人が生きている」ことを前提として成り立っているものなので、本人が死亡した後のことはタッチできません。とはいっても、これまでは実務上、仕方なく必要な手続きを後見人が行ってきたという現状もあります。これに関しても、任意後見契約と同時に「死後事務委任契約」を締結することにより、死後の事務を行ってもらうことができます。死後事務委任については、また別の機会で詳しく書きたいと思っています。

「5.」事実行為とは、法律行為(契約や事務処理)と反対の意味のものとして使われるものです。ここで言う事実行為とは、例えば、本人の介護そのもの、本人の部屋の掃除、本人のために料理を作る、などという行為がそれに当たり、任意後見人の仕事ではありません。(ただし、任意後見契約において、そのようなことも含めている場合にはこの限りではありません。)

とはいうものの、実務上は上述してきた「任意後見人の仕事」と「任意後見人の仕事ではないこと」の境目があいまいな場合もありますので、個別具体的な判断となるケースも多々あります。

 

【任意後見人の義務】

・本人の意思の尊重

・心身の状態への配慮

・生活の状況への配慮

以上の3つが法律上定められている任意後見人の事務にあたっての義務となります。

この中でも、最も重要とされているのが「本人の意思の尊重」です。

いくら判断能力が低下したといっても、本人には必ず「意思」があります。したがって、任意後見人には、任意後見契約を締結する前に本人の話をよく聞いて、可能な限り本人の考え方、思想、経験、好き嫌い、人生の歩み等を理解しておくことがとても重要です。本人とろくに話もしないで、任意後見人という大役を引き受けるのはかなり無謀であり、実際に、ご本人の判断能力が低下して意思表示ができなくなってしまったとき、本人・任意後見人双方にとっていいことが何もありません。

また、この「本人の意思の尊重」には、「残存能力の活用」という意味合いも含まれていると言われています。つまり、できることは本人にやってもらう、ということも重要なのです。任意後見人になったからと言って、全てを行う必要はなく、本人とよく話し合いながら、本人がやれることは本人に任せる、ということも時には必要であるということです。

 

以上、今回は「任意後見人の仕事と義務」について書いてきました。

最後までご一読いただきましてありがとうございました。