長久手市の在留資格(ビザ)をはじめとする外国人関連手続き専門特定行政書士、竹内です。
在留諸申請の手数料の増額が正式に決定いたしました。
パブリックコメントにはおそらく賛否両論が渦巻いていたものと思われますが、やはりほぼそのまま決定しましたね。
2026年(今年)10月1日からの申請手続分から新料金となります。
なんだかな~・・・と言ったところですね。
ということで、今回もスタートします!
前回は「永住許可ガイドライン(案)」について書きましたが、今回は、同じ「(案)」でも「永住許可取消しに関するガイドライン(案)」についてです。
【現行法では永住許可は取り消されないのか?】
そんなことはありません。
現行法でも、以下のような場合には永住者であっても在留資格を失う可能性はあります。
・退去強制事由に該当した場合(例:不法上陸、在留カード偽変造等)
・在留資格取消事由に該当した場合(例:うそをついて在留資格を取得した場合等)
・再入国許可(みなし再入国許可含む)を受けずに誤って単純出国した場合
等々
つまり、永住者の在留資格の取消しは改正法によって初めて定められたものではないです。
【今回のガイドライン(案)とは?なぜ定めることになったのか?】
今回のガイドラインは、一言で言えば「取消しできる事由を増やすため」のガイドラインです。
この「取消し事由を増やす」には当然ながら法改正が必要ですが、その法改正自体は既に令和6年入管法改正により行われており、その施行に当たって出されたものです。
これまでは「永住許可の取消し」に関するガイドラインは特に公表されていませんでしたが、なぜ今回は改正法施行に合わせて策定することになったのでしょうか?
ガイドラインはその目的を「外国人及び関係者の予見可能性及び処分の公平性を確保する」ためとしています。
要するに、どのようなことをしでかしたら取り消されるのかを具体的に示すことにより、外国人本人やその関係者(支援者や我々行政書士等)に今回の取消事由の拡大が正当なものであると理解してもらうことと共に、その具体例を示すことによって公権力(入管等)を一定程度拘束する(目安を公表することにより、めちゃくちゃな運用ができなくする)ことを目的としています。
上述したのは、文字通り「ガイドライン自体の目的」ですが、そもそも「なぜ永住者の取消事由を拡大することにしたのか」についても触れています。
・永住許可を受けた時には満たしていた永住許可の要件を永住許可後に満たさなくなる外国人が一部にお
いて見受けられる。
⇓
・☝のような永住者に永住許可を認め続けること=国民が不安や不公平感を感じるようになり、適法に在留している大多数の永住者を含む外国人への不当な偏見につながるおそれがある。
⇓
・以上のような状況は、国が目指している外国人との共生社会の実現の観点からも不適切。
⇓
・一定の事由に該当する永住者の在留資格の取消事由を増やすことが必要である!
主にこのような流れで取消事由拡大に至ったわけです。
【追加された「取消事由」とは?】
1.入管法22条の4第1項第8号
「永住者の在留資格をもつて在留する者が、この法律に規定する義務を遵守せず(第十一号及び第十二号に掲げる事実に該当する場合を除く。)、又は故意に公租公課の支払をしないこと。」
※解説※
以下の2つに該当すると、在留資格(永住者)の取消事由となります。
(1)「この法律に規定する義務」を守らないこと
(2)「故意に公租公課の支払をしないこと。」
まず「(1)」です。
さらっと書いてありますが、結構怖いですこれ。「この法律に規定する義務」ってめちゃくちゃあります。
・在留カード不携帯(不提示)
・住居地変更・住民登録の届出
・転職した場合の届出(就労資格者。辞めました・新たに入りましたの届出)
・永住者の在留カードの更新
等々
軽い手続きだけでも上記以外にもたくさんあります。ただし、ガイドラインでは入管法所定の罰則(退去強制事由に該当しないものに限る。退去強制事由に該当する場合は、そもそも取消ではなく退去させられるため)によってしっかり守ることが担保されている義務を指す、と書いてあります。
なので、例えば
・在留カードを紛失等したのに再交付申請をしない
・住民登録をしたものの、その内容が虚偽だった
・住民登録(や住所変更登録)をしない
・名前等(在留カード記載事項)が変わったのに入管にその届出をしない
・不法就労に係ろうとした(未遂。やったら退去強制事由)
・在留カードの偽変造にかかわろうとした(未遂。やっちゃったら退去強制事由)
・警察官に在留カードを見せろと言われてそれを拒んだ
など(まだまだたくさんありますが)をした永住者は、在留資格を取り消される可能性があります。
ただし、病気、感染症、災害など本人に帰責事由がないことにより義務を履行することができなかったような場合は、この取消しの対象外であるとされています。いわゆる「正当な理由」があるか否かですが、その判断は個別具体的にされますので、同じような状況でも取り消される人と取り消されない人が出る可能性は大いにあります。
次に「(2)」です。
これは「故意に」「税金などを支払わなかった」場合に在留資格を取り消す、ということです。
「公租公課」に含まれるもの
・住民税、所得税、相続税、固定資産税、年金保険料、健康保険料 等
「公租公課」に含まれないもの
・交通違反の罰金や反則金、富士山の入山料、公的施設の利用料 等
ここで言う「故意に」は「支払い義務があることを知っており、支払う能力があり支払うことができるにもかかわらず、あえて」というような意味と捉えておけばよいかと思います。一言で言えば「悪質な未払い」です。
注意事項として、以下のようなことが書かれています。
・永住者が経営する法人に関して、その法人が納付すべき税金等を故意に支払わないようなケース
・書面上は納税等されているが、実は申告を正しく行っていなかったケース(脱税)
このようなケースは、たとえ永住者個人の公租公課の支払いは(外観上)完璧でも、永住許可を取り消される可能性があります。
なお、1度滞納があったからといって即取消しとはならないとも記載されています。つまり、こちらも「個別具体的」に判断されます。
取り消すか否かの判断に当たっては、その永住者らの収入や資金・財産の状況、公租公課の滞納回数、滞納額、滞納期間、支払状況、滞納発生に至る経緯、滞納発生後の事業や生活の状況等、本人の言動その他の事情を総合考慮して決定されます。
また、この取消しは改正法施行後のみならず、改正法施行前の未納等(それだけでなく、その後の状況等を総合考慮して)を理由として取り消される可能性もあります。
★「故意に」とはみなされない具体例(以下のような理由で滞納等しても取り消されない)
・病気、災害、感染症等により業績不振となり、支払うことができないと認められる場合。
・督促や催告を受けて、それに反応し、支払う意思を示しているような場合。(猶予、分納など含む)
・DV被害を受け、逃げており収入がなくなってしまい納付できなくなっているような場合
・ハラスメントを受けてやむを得ず退職し、生活に困窮しているような場合
・生活保護を受けている場合
・給与から天引きされているのに、雇用先が滞納しているような場合
2.入管法第22条の4第1項第9号
「永住者の在留資格をもつて在留する者が、刑法第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律第十五条若しくは第十六条の罪、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条若しくは第六条第一項の罪又は盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律第二十二条の罪により拘禁刑に処せられたこと。」
※解説※
現行法上、就労資格者がこれと同じような罪により拘禁刑に処せられた場合には退去強制事由となり、在留資格の取消しにとどまらず、退去を強制されることになっています。
しかし、永住者に関してはこれが適用されないません。
そこで、永住者であっても悪質な犯罪を犯したことが確定した場合には、在留資格を取り消そう、というのがこの事由が追加された理由です。
そして「拘禁刑に処せられた」としか書いてないので、刑の長短はもちろん、執行猶予がついているか否かも問われません。
対象となる罪は以下のとおり
刑法:
住居侵入(同法第2編第12章)、通貨偽造(第16章)、文書偽造、有価証券偽造、支払用カード電磁的記録、印章偽造(第17章、第18章、第18章の2、第19章)、賭博及び富くじ(第23章)、殺人(第26章)、傷害(第27章)、逮捕及び監禁(第31章)、略取、誘拐及び人身売買(第33章)、窃盗及び強盗、(第36章)、詐欺及び恐喝(第37章)、盗品等に関する罪(第39章)
暴力行為等処罰に関する法律:
集団的暴行・脅迫・器物毀損、常習的傷害・暴行等(同法第1条、第1条の2、第1条の3)
盗犯等の防止及び処分に関する法律:
常習特殊窃盗、常習累犯窃盗、常習特殊強盗致傷(同法第2条、第3条、第4条)
特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律:
特殊開錠用具の不法販売・授与、特殊開錠用具の不法所持・指定侵入工具の不法携帯(同法第15条、第16条)
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律:
危険運転致死傷(無免許運転加重あり)(同法第2条、第6条第1項)
盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律:
指定金属切断工具の隠匿携帯(同法第22条)
【永住許可が取り消されたらどうなるのか?】
上述したような事由に該当した永住者がいた場合は、まず、入管がそもそも永住許可を取り消すかどうかの判断をします。
そして、その判断の結果取消しが決定した場合、その後の流れは以下のいずれかになります。
・在留継続が認められる場合 ⇒ 基本的に「定住者」の在留資格へ変更される。
・在留継続が認められない場合 ⇒ 出国する。
「在留が認められる場合」の定住者への変更は、申請により行われる通常の在留資格変更とは異なり、法務大臣が職権で行います。なので、申請はいりません。
「在留が認められない場合」となるのは、上述してきた違反が悪質な者や、改善が見込まれない者等です。在留が認められない=出国する必要がありますので、通常の取消し手続同様、出国期間が定められ、その間に出国することとなり、もし出国期間内に出国しなかったときは、不法残留となり退去強制事由に該当することとなります。
前回ブログで書いた「永住許可ガイドライン(案)」と同時に、この「永住許可取消しガイドライン(案)」についてもパブリックコメントが実施されています。(~9/4まで)
私は、前回のブログでも触れた通り、この取消しの方の案に関してはおおむね妥当だと考えているのでパブリックコメントは出しませんでしたが、これを読まれた方で意見を持たれた方は是非出してみてください。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。