今回も、引き続き在留資格の紹介です。
今回は『特定技能』という在留資格について書こうと思います。
『特定技能』は2019年4月施行の改正入管法により新設された、在留資格の中では最も新しいもので、これまでの外国人材の受け入れ政策に大幅な変革をもたらしたものです。(もっとも、コロナ禍により政府の想定よりも受入れが進んでいないのが現状ですが)
これまでの日本の外国人材受入れのスタンスは、簡単にいうと「有能で、日本の利益になる人材だったら、受け入れてあげます」というものでした。つまり、日本の利益になる人材以外は受け入れませんよ、ということだったのですが、この『特定技能』は、「ある程度の能力があれば、ある一定の職種に限り受け入れてあげます」というスタンスのもので、これまで外国人材に求められていた専門的・技術的な能力がそこまでない人材も受け入れを始めるという風に変わったのです。ただし、この在留資格も、「単純労働を認める」というスタンスではないことになっています。
『特定技能』は、これまで説明してきた他の就労資格と比べると、格段に手続きが猥雑で、申請人・所属機関の負担もかなり大きいです。
例えば、他の就労資格は❶上陸拒否事由に該当せず、❷在留資格該当性があり、❸基準適合性があれば許可されましたが、『特定技能』はさらに受け入れるための条件が増えます。したがって、申請に際して提出する書類もかなり多いです。
特定技能(1号)は前記❶~❸の他にさらに下記のような条件を満たす必要があります。
❹受け入れ機関が一定の条件に適合すること。
❺受け入れ機関が外国人と特別な雇用契約を締結すること。
❻特定産業分野(下記参照)ごとに定められた基準に適合すること 等
前述のように『特定技能』で受け入れることができる職種は決められており、下記の12分野に該当する業務に就かないのであれば許可は下りません。この受け入れできる職種のことを「特定産業分野」といいます。
1.介護
2.ビルクリーニング
3.素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業
4.建設
5.造船・舶用工業
6.自動車整備
7.航空
8.宿泊
9.農業
10.漁業
11.飲食料品製造業
12.外食業
上記12分野は、深刻な人手不足により存続が危ぶまれている職種として国が定めた職種です。つまり、企業や業界団体等がどれだけ努力しても、日本人の働き手が確保できないため、不足人材を補うためには外国人に頼るしかない、という業種で、そのような業種に限り、そこまで専門的な技術・知識がないまでもある程度の能力を有する外国人であれば受け入れを認め、人材不足を補おうというのが『特定技能』の目的なのです。
次回以降、しばらく『特定技能』の複雑な制度を1つずつ深堀していこうとおもいます。