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【第118回】スタートアップビザの統一

長久手市の在留資格等(ビザ)等外国人関連手続き専門特定行政書士、竹内です。

暖かくなり、昨日は高知や九州で桜の開花宣言がありましたね。大嫌いな冬がついに終わりそうで、個人的にはうれしく思います。ただ、今週末は最後(?)の寒波がやってくるようです。もうひと頑張り、春はすぐそこです。

というわけで、今週もスタートです。

 

今回は新しいニュースを取り上げたいと思います。

外国人が日本で、会社を経営したりする場合には、通常「経営・管理」という在留資格(ビザ)を取得する必要があります。しかし、この在留資格(ビザ)を取得する条件は意外と厳しく、不許可も多い在留資格です。

しかし、日本政府は、外国人の日本での企業を促進するために、この「経営・管理」という在留資格とは別に、「外国人起業活動促進事業」と「外国人創業活動促進事業」というものを設けて、外国人による企業を促進するための条件緩和を行っていました。

この度、上記の2つ(似たような名前の2つ、「外国人起業活動促進事業」と「外国人創業活動促進事業」)が一本化されることになりましたので、簡単に解説してみたいと思います。

 

【そもそも在留資格「経営・管理」とは?そして、その要件】

ビジネスビザと言われることもあるこの「経営・管理」という在留資格(ビザ)は、日本で事業を経営したり、事業の管理(管理職的役割)をする外国人のためのものです。

その在留資格の取得要件(経営の場合に限定します。)が、

① 事業所の確保

② 規模(資本金額500万円以上等)

の2つとなります。

つまり、入管に対して申請をする段階で、既に「日本に事業所が確保されていること」「(会社の場合)500万円以上の出資がされていること」が必要です。(※「経営・管理」ビザの詳細は第7回ブログをご参照ください)

 

【外国人起業活動促進事業と外国人創業活動促進事業って何?】

似たような名前で腹が立ちますよね(笑) 何が違うのか。まずは、「経営・管理」と「外国人起業活動促進事業・外国人創業活動促進事業(以下、併せて促進事業といいます。)」の違い。

★経営・管理

上述のように、事業所の確保、資本金500万円出資という条件が既に満たされている必要があります。

行うことができる活動は、文字通り「事業の経営又は管理」に限られる。

★促進事業

事業所の確保、資本金500万円出資のいずれの条件についても、一定期間猶予されます。

事業の経営又は管理のみならず、その起業準備(事業所の確保、登記手続きなどの事業を始めるための準備行為)活動や、その起業準備活動に付随しておこなう報酬を受ける活動なども認められます。

 

では、次に「外国人起業活動促進事業」と「外国人創業活動促進事業」とは何が違うのか。

★外国人起業活動促進事業

・在留資格(ビザ) ⇒ 特定活動

・対象地域 ⇒ 全国

・対象職種 ⇒ 一定の職種に限られる(愛知県の場合は、IT分野など)

・対象者 ⇒ 国内外の外国人

・活動可能期間(在留期間)⇒ 最長2年

・管轄、根拠法令等 ⇒ 経済産業省、経産省告示

 

★外国人創業活動促進事業

・在留資格(ビザ) ⇒ 経営・管理

・対象地域 ⇒ 国家戦略特別区域法に基づき定められた国家戦略特区

・対象職種 ⇒ 特に制限なし

・対象者 ⇒ 新規入国者(留学生からの変更も可能)

・活動可能期間(在留期間) ⇒ 原則6箇月(最長1年6箇月)

・管轄、根拠法令等 ⇒ 内閣府、国家戦略特別区域法等

 

このように、与えられる在留資格、対象地域、対象職種、対象者、在留期間などに違いがありますが、どちらの制度も外国人の創業・起業を促進する(つまり、ハードルを下げる)制度であることは同じです。

また、いずれの制度も最終的には「経営・管理」の在留資格(創業活動の方は、正確に言えば「本来の経営・管理」の要件)を取得することが目的となります。

また、手続き自体も非常に複雑となり(入管申請の前に地方公共団体や経産省のチェックが入る。つまり、ワンクッション手続が増える)時間も更にかかることから、「経営・管理」の条件を備えることができる外国人の方は、この制度ではなく、最初から「経営・管理」の取得をめざすことが一番です。

しかし、どうしてもそれができない方でも、起業・創業計画がしっかりしていて、事業開始後の適正な経営が見込まれるのであれば、特別に在留を認めようというのが、この制度の趣旨です。

 

【促進事業の一本化】

以上のように「外国人起業活動促進事業」と「外国人創業活動促進事業」という似たような2つの制度が併存していたのですが、令和7年1月1日施行の告示改正により、この2つが一本化されました。つまり、一つになりました。

制度的には一本化されてやや複雑さが和らいだ感はありますね。

なお、2点の緩和要件(事業所の確保、資本金500万円出資)に関してももちろん引き続き適用され、その期間も2年と1年6箇月でバラバラでしたが、この一本化により「最長2年」に統一されました。

対象事業に関しては「我が国の産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することを目的として行うもの」であることが求められるので、限定されます。

また、この事業は起業・創業しようとする外国人本人のみではできません。必ず間に地方公共団体等の経産省に認定を受けた「支援団体」が入ります。(民間企業もあり得ます)

外国人本人 ⇒ 地方公共団体等(支援団体) ⇒ 経産省

という形になります。​

 

日本で起業(スタートアップ)を考えているが、資金面などで中々踏み出せない方もいると思います。そういった方は是非、こういった制度の利用も検討してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。