長久手市の在留資格(ビザ)をはじめとする外国人関連手続き専門特定行政書士の竹内です。
早いですね~。5月も最終週となりました。
ここ数日は、どんよりした天気が続き、梅雨のような気候になってきていますが、明日からはまた晴れ間が見えそうですね。ちなみに、沖縄、九州南部は既に梅雨入りしたとのことで、こちら(愛知県)の梅雨入りはいつ頃なのでしょうか?雨は必要なものではありますが、やはり嫌ですね。
という感じですが、今週も頑張っていきましょう。
今回は、前々回から始まった「日本国籍シリーズ」を一旦休止して、5月23日に入管庁が発表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(以下、ゼロプランと略します)というものについて、色々書いていこうと思います。
このゼロプランは、大きく分けて下記の3つのカテゴリーに分かれています。
1.入国管理
2.在留管理・難民審査
3.出国・送還
そして、そのカテゴリーの中で入管庁が取り組む事項について触れられています。
【1.入国管理について】
ここでの大きなことは、昨今ニュースでもよく耳にする「JESTA」の導入ですね。9.11のテロをきっかけに、アメリカ(ハワイ含む)に観光などで行く場合には、短期間の滞在ならビザ(査証)が必要のない日本人に対しても、事前の渡航認証(ESTA)が義務付けられるようになりました。
このアメリカのESTAの日本版がこのJESTAです。
現状では、ビザが不要な国からの渡航者についての情報は、彼らが日本に到着してから入国審査を受ける時点までわかっていない状況です。(要するに誰が、いつ日本に来るのかが当日その場でしかわからない)
そこで、このJESTAを渡航者に義務付けることにより、事前に渡航者情報を把握し、上陸させるべきでない渡航者等からの認証申請があった場合には事前に察知し、当該外国人の上陸を未然に防ぐこと、その他不測の事態が発生した場合に速やかに事前に取得した情報を用いて迅速に対応することなどを目的として導入されます。
そもそも2030年導入予定であったこの制度を、2028年度中の導入(つまり、遅くとも2029年3月31日までには導入)に前倒しして進めていることからして、政府としてはこの制度を一刻も早く開始することに大きな意義があると考えているようです。
個人的には、この制度を取り入れても不正申請、虚偽申請等により不法・不当な入国を企て、そして成功してしまう者が多数出てくるのではないかと思いますが、失敗を重ねながらも徐々に制度を向上させ、最終的に不法・不正入国の大部分を防ぐことができるようになっていけばいいな、と思います。
【2.在留管理・難民審査について】
ここで注目したのは「難民認定申請の審査の迅速化」の部分です。
従来より入管庁は「保護すべき者は確実に保護し、在留が認められない者は迅速に送還する」という方向性を明示していましたが、今回のこのゼロプランは、それを実際に真剣にやっていくぞ、という入管庁の「決意表明」であると私は感じました。
今回のことにより、いわゆる難民認定申請の誤用・濫用(退去強制を免れるためにとりあえず申請をするなど、本来の目的からそれた難民申請等をすること)には、これまで以上に毅然とした対応が取られることが予想されます。具体的には、
・3回目以降の難民認定申請者の送還の迅速化(送還停止効の例外規定の厳格な適用)
・仮放免や補完的保護の適用の厳格化
・いわゆるB案件(申請した者のうち、明らかに難民として認められる事情ではないことを主張しているもの)として分類されていた者を、その中で更に分類して、その中のある類型に該当する者に関しては、門前払いに近いこれまで以上に迅速な不認定処分を出し、速やかに送還する。
などです。
【3.出国・送還について】
これが一番怖いですね。
この趣旨を一言でいうと「近年の入管法改正により導入された制度をしっかり・厳格に適用していくぞ」ということです。
1つ目としては、上記でも触れた「送還停止効の例外規定」の厳格な適用です。例えば、大きな犯罪を犯して退去強制が確定した外国人や難民認定申請を明らかに誤用・濫用している外国人がいる場合、当該規定を適用して入管法等の法律に則って国費送還をバンバンやっていくということです。
2つ目は、出国命令制度の活用です。出国命令は、大きく分けると「自己申告又はそれに近い形の外国人に対する出国命令」と「入管からの命令による出国命令」の2種類があります。
まず、前者ですが、改正前は「入管にバレていないけど、不法滞在であることを自ら申告した者」の内一定の条件に該当する者のみが対象となっていました。しかし、改正後には「入管にバレて退去強制手続きが開始されたが、その結果の通知を受ける前に「すんません、私が悪いです。私、自分で出国します」と申し出た者」も対象となりました。
つまり、出国命令の対象者を広げたということです。ちなみに、出国命令により出国した場合は、原則として日本への上陸拒否される期間は1年です。しかし、退去強制されると最短で5年間、最大10年(犯した罪や違反の内容によっては永久に)日本への上陸ができません。
入管としては「出国命令で出国すれば、比較的早く日本への再入国ができるよ。」ということを積極的に周知して、出国命令制度を活用したいというわけです。「とにかく不法滞在者を少しでも減らしたい」という入管の心の叫びともいえるかもしれませんね。
他にもゼロプランでは注目すべきことが書かれていますが、長くなりすぎるので以上といたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。