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【第132回】日本国籍⑥~外国国籍を持つ日本人の日本国籍喪失・離脱~

長久手市の在留資格(ビザ)をはじめとする外国人関連手続き専門特定行政書士、竹内です。

梅雨、短かったですね~、すばらしいことではありますが、水不足のことを考えると心配ですね。

明日から7月、夏本番という感じでわくわくしてきます。

というわけで、今週もスタートです。

 

今回も「日本国籍シリーズ」のつづきです。

今回は、外国の国籍を取得した日本人の取扱いについて条文と照らし合わせながら書いてみようと思います。

では行きましょう。

 

【そもそも「日本人」「外国人」って何?(外国人の定義)]

日本の法律上、外国人の定義は国籍法ではなく入管法第2条第一項第一号に定められています。

入管法第2条第一項第一号には「外国人 日本の国籍を有しない者をいう。

つまり、日本人であるか外国人であるかはその人が「日本国籍を有するか否か」の一点のみによって決まります。

なので、

無国籍者=(入管法上の)外国人、日本と他国の多重国籍者=日本人

ということになります。

これを前提として、以下国籍法の規定を見ていきましょう。

 

【日本の国籍の喪失~国籍法第11条~第13条】

条文:

第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍

を失う。

第十二条 出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和二十二年法律第二

百二十四号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさ

かのぼつて日本の国籍を失う。

第十三条 外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することがで

きる。

2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。

解説:

まず第十一条第一項には、日本人が自分で希望して他の国の国籍を取得したときには自動的に日本の国籍を失う旨が定められています。

例えば、日本人であるAさんが、X国に住んでいて​「X国の国籍を取得した方が今後の生活のために便利だな」と思いX国の国籍を取得した場合、その瞬間AさんはX国人となり、日本人ではなくなる=入管法上の外国人となります。

したがって、Aさんが日本へ帰る際はパスポートの他に査証(ビザ)が必要になります。(査証相互免除国であり、その許された期間の短期滞在である場合は除く)

さらに、Aさんが将来的に「あ~、やはり日本がいい。日本で余生を過ごしたい」と思っても、Aさんは外国人なので在留資格(ビザ)の取得が必要となってしまいます。

 

第十二条は、例えば、日本人の父(又は母)を持つBさんがY国で生まれたとします。そのY国は日本と異なり、出生地主義(親の国籍などにかかわらず、生まれた場所が自国内であれば自国の国籍を付与するという考え方。これに相対するものが血統主義であり、日本はこれを採用している)を取っていると、BさんはY国と日本の二重国籍となります。このような場合には、Bさんが日本国籍を維持するためには「私はY国で生まれてY国の国籍を取得したが、このまま日本の国籍も維持したい(留保したい)」という意思表示をしなければならないということです。これを怠ると、Bさんは生まれた時に遡って、つまり実体として日本国籍を有していた期間があったとしても、生まれた時から外国人であったことになります。

 

第十三条は、日本人が日本国籍を離脱することができる場合が定められています。ここで注意すべきは「外国の国籍を有する日本国民」でなければ国籍を離脱することはできないということです。

日本国憲法では「国籍離脱の自由」(第22条第二項)を認めていますが、これは「無国籍になる自由」までも認めるものではないと解されています。したがって、日本国籍しか持っていない人は日本の国籍を離脱することはできません。つまり、何らかの事情で多重国籍になっている人に限り、その複数の国籍の中から日本国籍を除外したい場合は法務大臣に届け出ることで日本国籍を離脱できるということです。

なお、十二条とは異なり、十三条の届出をして日本国籍を離脱した場合には、その届出の時に日本の国籍を失うことになるので、それまで日本人であった事実は消えません。この違いは、子の出生による日本国籍の取得等の場面で大きな違いが生じます。

 

以上、今回は「外国国籍を有する日本人の日本国籍喪失・離脱」について条文に沿って簡単に紹介しました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。