loader image

【第134回】日本国籍⑧~日本の国籍の選択・喪失の宣告~

長久手市の在留資格(ビザ)をはじめとする外国人関連手続き専門特定行政書士、竹内です。

7月3週目ですね。いや~、暑い。そして、今ニュースでも取り上げられてますが、台風の季節ですね。ここから10月末までは注意が必要ですね。直撃しませんように、そして、悲惨な災害に見舞われる地域がありませんように・・・。

たまたまですが、本日43歳となりました。おそらく人生の折り返し地点を過ぎました。

さすがに1・2年目よりはちょくちょくご依頼をいただいていますが、まだまだ本業だけでは食っていくのは難しい状態ではあります。しかし、着実に実績を積んで地域の為に頑張っていきたいと思っています。

というわけで、今週もスタートしましょう。

今回もつづきですね。早いもので8回目となりました「日本国籍シリーズ」です。

今回のテーマは「日本の国籍の選択・喪失の宣告」です。

 

【条文解説:国籍法第16条】

条文:

第十六条 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。

2 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失つていないものが自己の志望によりその外

国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であつても就任することができる職を除く。)に就任し

た場合において、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対

し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。

3 前項の宣告に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

4 第二項の宣告は、官報に告示してしなければならない。

5 第二項の宣告を受けた者は、前項の告示の日に日本の国籍を失う。

解説:

まず、第一項冒頭に出てきた「選択の宣言」とは、多重国籍者が日本の国籍を選ぶことです。これについての詳細は、前回のブログをご参照ください。

この「選択の宣言」をした人は、制度上日本人を正式に選択したことになっても、その人持っている日本以外の国籍が自動的に消滅するわけではありません。

第16条第一項では、「日本の国籍を選択したのであれば、あなたが持っている日本以外の国籍からちゃんと離脱する手続きもしてくださいよ!」ということが書かれています。日本は二重国籍禁止という言葉をよく聞きますが、この条文がそういわれるゆえんの1つでもあります。

 

第二項には、第一項で書かれているとおり、原則として日本以外の国籍を離脱するように努めなければならないのですが、当然ながら、様々な理由(単純に忘れた、めんどくさい、恣意的な思い等々)でそれを行わない者もいます。

このような場合において、その者が日本にとって喜ばしくない行為をするおそれがあると認められる場合(すなわち重国籍であることを利用して国益を損なう行為に及ぶおそれがある場合)に、その者の日本国籍を半強制的に失わせることができる旨を定めた条文が、この第二項です。

例えば日本とA国の二重国籍者であるXが国籍法の規定に基づいて「選択の宣言」をしたものの、A国の国籍を離脱することなくA国の防衛省の軍事機密を取扱う中枢の機関の職員に就いたとします。このようなケースでは、その事実が日本の国防等にとって不利益をもたらす“可能性”があります。そして、その者のとった行為(公務員への就職)が、日本にとって「著しく」不適当である場合には、法務大臣の権限により、一定の手続を経て、その者の日本国籍を失わせることができるというものです。

 

第三項~第五項には、第二項の手続のスーパー最低限の内容が定められています。

第三号には「聴聞」という言葉が出てきます。これは行政手続法(以下、行手法)に定められているもので、簡単にいうと、自分にとって著しく不利益な行政の処分(ここでは日本の国籍の喪失。行手法第13条第一項第一号ロ参照)がなされる場合に、行政に対して自分の主張を述べることができる機会です。この結果、行政が妥当と判断すれば、実際に処分(日本の国籍の取消)がなされるということです。

そして同行の「聴聞」は、行手法上、原則として非公開(行手法20条第六項)とされていますが、国籍法ではその逆、公開に「しなければならない」とされています。この条文にはただし書きもないので、非公開で行われた「喪失の宣告」の「聴聞」は無効ということになります。

 

第四項では、聴聞を経て結果的に喪失の宣告がなされた場合には、その旨を官報に告示しなければならない旨が定められています。官報とは政府が出している機関誌のようなもので誰でも見ることができます。

 

第五項は、その「喪失の宣告」がいつからその人に法的な効力をもたらすかということが書かれており、それは「官報告示の日」からとなります。従って、官報告示日より前の日(前日23:59)までは、その人が日本人であった事実は消えません。官報告示の「時」ではないので、告示が10:00になされたとしたら、告示日の0:00まで遡って効力が生じるということです。

 

以上、今回は「喪失の宣告」について書いてみました。

最後までお読みいただきありがとうございました。