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【第143回】育成就労制度の開始に関連した法令等の変更点

長久手市の在留資格(ビザ)をはじめとする外国人関連手続専門特定行政書士、竹内です。

9月3連休ですね。

先週はほぼ毎日外出していたため、たくさん歩いたからか何年かぶりに筋肉痛です…。

スポーツ少年時代は頻繁に起こっていましたが、この歳になるとなんか本当にきついですね(笑)

というわけで、今週もがんばりましょう。

 

今回は、育成就労制度の開始にあたって技能実習法はもちろん、入管法もそれに合わせていくつか変更されていますので、その主な点をいくつかご紹介しようと思います。

 

1.育成就労産業分野の創設

技能実習においては、職種・作業に制限はほぼありませんでした(あってないようなものでした)。もちろん、第一号⇒第二号、第二号⇒第三号へ移行できる職種・作業には制限がありましたが、少なくとも第一号には「技能実習生の本国において修得等することが困難なもの」というあいまいな制限しかありませんでした。

しかし、育成就労制度では制限があります。

結論からいうと、特定技能産業分野の中の一部を「育成就労産業分野」として定め、その分野に限り受け入れることができます。

技能実習と特定技能の関係は、法律上・制度上は全く別のものでした。そのために、別に産業分野を一致させる必要はなかったのですが、育成就労制度は「特定技能へのステップアップのための制度」ですので、当然ながら産業分野が一致している必要があります。

 

2.特定技能制度における外国人支援に関する変更点

特定技能(1号のみ)では、外国人を受け入れるために「一号特定技能外国人支援計画」を作成し、それに沿った外国人支援をしなければなりません。

そして、その支援は受入機関自らやってもいいですし、外部機関に委託することもできます。

後者の場合、現時点においては法務省の登録を受けた「登録支援機関」と呼ばれる機関に委託するのが一般的ですが、そうではない機関に委託することも認められています(ただし、その場合支援に関する責任は受入機関である会社等が負う)。

しかし、本改正後はこの委託先は「登録支援機関」に限定されます。

つまり、自社でやるか、登録支援機関に全部任せるか、自社+登録支援機関でやるかの三択になるということです。

 

3.転籍(転職)

技能実習においては、原則転籍不可、やむを得ない事情がある場合のみ転籍可とされていました。

そして、一部の実習実施者(会社等の受入機関)がこのルールを悪用し、技能実習生を縛り付け、劣悪な労働条件・労働環境で働かせていたこともあり、問題視されていました。

また、転籍要件の「やむを得ない事由」のあいまいさについても同様です。

育成就労制度では、自己都合での転籍も一定の条件を満たすことで可能とされます。

その条件とされているのが主に以下のものです。

① やむを得ない事情がある場合(継続。ただし、その内容を具体的に法令や基準、規則等に明示)

➁ 同じ育成就労産業分野内であること

➂ 最初に入社等した企業等で最低1~2年働くこと(分野ごとに定められる。1年の分野もあれば2年もある)

➃ 定められた日本語能力・技能水準の条件を満たすこと

⑤ 転籍先が一定の要件を満たすこと

「③」に関しては、現在も受入機関側の要求(転籍不可というメリットは死守したい。つまりお金をかけて受け入れたのに1年で辞められては困るという思い)と人道上の配慮(人権を考慮し、自身の意思で転職ができないのはおかしい。憲法の「職業選択の自由」にも抵触?)がぶつかっているところであり、最初は全分野「1年」とされていたものが「1~2年、分野ごとに定める」という風に変わっています。この点については、最終的にどのようになるのかは今後の注目点です。

 

4.監理支援機関、外国人育成就労機構の創設

(団体監理型)技能実習制度では、「監理団体」が外国人と企業等(受入機関)との間に入り、労働契約の締結等をあっせんし、技能実習の適正な実施を監理していました。

育成就労制度では、この監理団体が「監理支援機関」と名称を変え、外部監査人の設置など許可要件を厳格化した上で、新たに外国人と受入機関の間に入って監理・監督していくことになります。

また、技能実習制度においては受入機関の役員などが、監理団体の理事等を勤めていることが多かったのですが、育成就労制度では、受入機関と密接な関係がある役員や職員を、その受入機関に関する業務に係ることが禁止されます。本来の監理支援機関の役割を考えるとごく当たり前のことですが、それがこれまでは放置されていたので、この制度改正に合わせて明文化されたことになります。

技能実習制度では、「外国人技能実習機構」という認可法人が、監理団体の監督等の役割を担っています。つまり、受入機関と国(厚労省、法務省等)の間にある法人ですね。

基本的には各種届出や手続きは、受入機関・監理団体から直接国へ、ではなく、この外国人技能実習機構を通して間接的に行われています。

育成就労制度の開始に伴い、この外国人技能実習機構は「外国人育成就労機構」と名を変えた上で、組織・役割を再編されることになります。

これまでの外国人技能実習機構は、あくまでも「技能実習」における機関であったので、特定技能とは直接関係していませんでした。

しかし、育成就労制度においては、機構の役割の中に「特定技能外国人(原則1号のみ)の相談・支援」というものが加わります。その上で、育成就労外国人の転籍支援、受入機関・監理支援機関の監理等の役割も果たすことになります。

つまり、「特定技能制度の前段階である育成就労制度」という新たな制度に切り替わることで、機構の役割も「育成就労+特定技能1号」の両方を見る、という風に変更されるということですね。

 

以上、今回はここまでにします。

最後までお読みいただきありがとうございました。