ご無沙汰しております。長久手市の行政書士、竹内です。
1月中旬よりホームページをリニューアルしていたため、前回からだいぶ間が空いてしまいましたが、今週より再開させていただきます。なお、本来は月曜更新でしが、タイミングの関係で1日ずれております。申し訳ございません。
今回は、前回のつづきとして、在留資格(ビザ)の紹介の中の『特定技能』の中の、『特定技能雇用契約』の中身(条件)についての後編です。
❶労働等法令の遵守
❷労働者の離職に関する事項
❸行方不明者の発生に関すること
➍出入国・労働関係法令違反等に関すること
❺活動内容に関する文書の備え置き
❻保証金の徴収、違約金を定める契約等の禁止
❼外国人支援に要する費用について
❽労働者派遣をする場合について
❾労働者災害補償保険法について
❿所属機関の体制について
⓫報酬の支払いについて
以下、上記❶~⓫のうち主なものの解説を簡単にいたします。
❶については、条文では「労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること」とさらっと書いてありますが、実際には労働に関する法令だけでも、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法、男女雇用機会均等法、労働施策推進法、労働者派遣法、船員職業安定法、育児介護休業法など膨大な数の法令があり、これら全てを「遵守」していなければなりません。
❷は、これから雇用する特定技能外国人と「同種の業務」に従事していた労働者を離職「させていない」ことを条件としています。同種の業務は、同一の業務より広い概念で、基本的に労働内容が異なっても、同一の労働条件で働いているフルタイム労働者も含まれます。定年等で退職した場合、重責解雇に当たる場合、有期の労働者の期間満了による円満な退職の場合、自発的に離職した場合等、特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により、離職「させて」いなければ問題ありません。ただし、経営難によるリストラ、有期雇用契約の延長の期待が少しでもあるような場合の雇止めなど、労働法令上は解雇が認められる場合であっても、特定技能の世界においては、そのことをもって「離職させていない」に該当しないわけではありません。無期雇用以上に有期雇用労働者の解雇はハードルが高く、特定技能外国人を雇い入れる所属機関は「解雇はできない」と思って覚悟をもって雇い入れることが必要といえます。
❸過去1年以内又は、既に特定技能外国人を雇い入れている場合はその雇用契約締結の日以後、外国人の行方不明者を発生「させて」いないことを求めるものです。これも、❷同様注意が必要です。仮に、賃金の未払いや遅れ、残業代の未払いなど、所属機関が「違法又は不当」な行為等を行っている間に外国人が行方不明になった場合もこれに該当してしまいます。
➍は、❶に掲げたような労働法令違反をした者や、禁錮以上の刑に処せられた者、暴力団等と関連する者等を欠格者として定めたものです。ここには、出入国関係法令違反も掲げられており、よって、技能実習法も含まれます。例えば、これから受け入れようとする外国人と関係があってもなくても、その機関で以前(現在)技能実習生を受け入れていた(る)場合において、その際に技能実習計画の認定の取消処分を受けたことがあるのであれば、それが欠格事由に該当し、特定技能外国人を受け入れることができなくなってしまいます。
❺特定技能所属機関は、特定技能外国人を受け入れた場合、その外国人が実際に勤務する事業所(法人単位ではなく、実際に外国人が仕事を行う事務所等)に、活動内容に関する帳簿を備え置く義務があります。この帳簿を基に、定期的な届出を行うことになります。また、この帳簿を備えていない場合、または、備えていてもないように不備がある場合も欠格事由に該当し、特定技能外国人の受け入れができなくなる可能性があります。
❼一号特定技能外国人を受け入れる所属機関は、原則として、一号特定技能外国人支援計画という外国人の職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援に関する計画書を作成する義務があります。この中には義務的支援(絶対に実施しなければならない事項)と任意的支援(義務ではないがやった方がよい事項)がありますが、義務的支援に関する費用(任意的支援も上記支援計画に記載した場合は義務的支援となる)、例えば、出入国時の送迎に要する費用などを、外国人に直接的にも間接的にも負担させてはいけないという条件です。
⓫報酬の支払いについて。報酬の支払い方法を規定する条件です。原則として、銀行等への振込をすべきです。振り込み以外の方法でも可能は可能ですが、手続きがさらに増えるためおすすめできません。なお、建設分野に関しては、必ず「振込」でなければなりません。なお、振込による給与の支払いについては労働者の同意が必要である点も留意が必要です。
以上、前回・今回にわたり「特定技能雇用契約」について書いてきました。なお、これは最低限であり、これら以外にも特定産業分野ごとにさらに細かい基準等が定められております。特定技能という在留資格(ビザ)は、本当に複雑怪奇なわかりにくい在留資格であり、しかも、ちょっと道を外れると即欠格事由に該当してしまうという恐ろしいものです。入管業務に知識のない一般企業等の担当者様だけでは到底太刀打ちできないレベルのものとなっておりますので、そういうときはぜひ専門家を頼っていただくことをお勧めします。