長久手市の行政書士・竹内です。
前回までしばらく続けてきました「特定技能」の在留資格(ビザ)に関して、今回を、一旦最終回とさせていただきます。特定技能は他の就労資格(就労ビザ)等と比較して複雑難解さが極めて高く、専門家としても非常に取扱いが難しい在留資格ですので、ブログを書こうと思うとどれだけでも書けてしまいます。そのため、一旦今回を区切りとし、また、業務や社会情勢の流れを見て書いていこうと思います。
ということで、今回は特定技能(1号)の在留資格に関する要件の1つである「一号特定技能外国人支援計画」というものについて書きたいと思います。
「一号特定技能支援計画」(以下、支援計画)とは、簡単に言うと、受け入れた特定技能外国人に対する日本における職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援を行うために特定技能所属機関(外国人を受け入れる会社等)が作成し、実行しなければならない支援実施計画です。
なお、この支援計画は、一号特定技能外国人についてのみ必要なもので、二号特定技能外国人には作成の必要はありません。
支援計画には「義務的支援」と「任意的支援」があります。義務的支援は、文字通り絶対に計画に組み入れて実施しなければならない事項であり、任意的支援はマストではないが追加的に実施することが望ましい事項です。ただし、「任意的支援」として定められている事項も、支援計画に組み入れた場合は義務的支援となりますので、注意が必要です。
また、この支援計画の義務的支援に必要となる費用(出入国時の送迎にかかる費用等)は、特定技能外国人に負担させることはできません。そして、上記のとおり、任意的支援を支援計画に組み入れた場合には、その費用も負担させることができない点に留意が必要です。
支援計画の支援内容には、主に次のようなものが掲げられています。(以下は、すべて義務的支援です)
❶入国前の日本についての情報提供
❷出入国時の送迎(出国の際は空港まででなく、保安検査場まで見送りが必要)
❸日本での外国人の住宅等の確保(賃貸借契約に関する保証人になること等が必要です)
➍公的手続の支援(外国人が日本で居住を開始するために必要な公的機関等への各種届出等の支援)
❺相談・苦情等の対応
❻定期的な面談の実施(外国人と支援責任者・支援担当者及び監督する立場にある者との定期的な面談)
❼解雇等の場合の転職支援
❽問題発生時の対応(緊急事態発生時の深夜等時間外の緊急連絡先やメールアドレスの周知など)
上記以外にもまだまだあります。
大きな会社等であれば、自社で支援計画をすべて実施することができると思いますが、中小企業等の小規模事業所では、それが困難な場合が多いです。たとえば、支援責任者・支援担当者の選任に関して、2年以上の外国人生活相談等を業務として実施した経験を有する職員の準備、外国人が十分理解可能な言語でサポートできる職員等を用意するのは困難な場合もあります。
そのような場合は、法務省の登録を受けた「登録支援機関」に支援計画の実施を全部委託することも可能です。登録支援機関に全部委託した場合に限り、そのことをもって、この支援計画の適合性を満たすものと判断されます。なお、一部のみ委託したり、全部委託する場合でも登録支援機関以外に委託することも可能ですが、その場合は「全部を委託」していないので、支援計画の全部の実施を委託することができる要件を所属機関がすべて満たす必要があり、その責任もすべて所属機関が負うことになります。
なお、この支援計画で実施を約束した事項を実施していない場合は、欠格事由に該当し、最悪の場合は、現に受け入れている特定技能外国人全員の転職支援(上記❼)をする義務が生じるとともに、5年間特定技能外国人の受け入れ自体ができなくなる可能性があります。
特定技能の制度は、技能実習制度と併せて、その在り方が、現在、法務省で協議が行われています。おそらく、近い将来何らかの大改革・大法改正があるものと思われます。
いずれにせよ、もう少しわかりやすく、運用しやすい制度になってもらいたいと切に願うところではあります。