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【第26回】介護に関する在留資格

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士の竹内です。

今回は、これから更に人手不足が懸念されながらも、社会にとって必要となる「介護職」に関する在留資格(ビザ)について書いていこうと思います。

介護に関する在留資格には、「介護」、「特定技能」、「特定活動」などがあります。今回は、それぞれの在留資格(以下、ビザ)の要件や違いなどを比較して書いていきたいと思います。

【在留資格「介護」について】

在留資格該当性「日本国内の機関・会社等との契約に基づいて、介護福祉士の資格を持つ者が行う介護又は介護の指導を行う活動」

これは、「介護福祉士」の資格を取得し、介護福祉士の登録を受けた者が、要介護者や要支援者に対して介護を行ったり、それらの方々又はその介護者に対して介護に関する指導を行うことを職業として行うことが、このビザに該当する活動であるということです。当然のことながら、就労するためのビザなので、報酬を受けることが必要で、日本人が就労する場合に受ける報酬額と同等額以上の報酬でなければなりません。

なお、ここでいう「介護福祉士」は、日本の法律でいう「介護福祉士」の資格を指しますので、外国において介護福祉士と同等の資格を取得していても、日本の介護福祉士の資格を取得していない限り、在留資格該当性は有りません。

従って、介護に関するビザの中でも、この「介護」というビザは(下記で述べるEPA介護福祉士と共に)​最上位に位置する資格と言えると思います。

このビザでは、身体介護等はもちろん、ケアプランの作成や、介護関係機関との連絡調整、介護の指導を行うこともでき、仮に、介護福祉士の資格を有する外国人の方が、このような業務に専ら従事しており、身体介護に係る業務を全く行っていない場合でも、在留資格該当性はあります。この点が、以下の「特定技能」との大きな違いの一つと言えます。

ちなみに、身体介護に係る業務は全く行わないケアマネージャーがケアプランの作成や関係機関等との連絡調整を行う場合は、技術・人文知識・国際業務の在留資格で受入が可能となり得ます。

【特定技能「介護分野」について】

特定技能1号という在留資格は、2023年4月現在12の特定分野に限って認められているビザです。その12分野の中の一つに「介護分野」があります。こちらは、前述の「介護」とは異なり、「介護福祉士」の資格を取得している必要がなく、外国人本人に関しては、下記の条件を満たしていれば基準に適合することになります(特定技能は、外国人本人の基準以外に、受入機関・雇用契約・支援計画等他に満たすべき条件が多々あります。詳しくは、私のブログの11~16回をご覧ください。)。

このビザで行える活動は「利用者の「心身の状況に応じた入浴・食事・排泄等の身体介護及びそれらに付随する支援業務」です。

従って、上記の「介護」のビザとは異なり、ケアプランの作成等に従事することはできません。必ず、身体介護又はそれに付随する支援業務を行う必要があります。もちろん、他の日本人従業員と同様に、それらの業務に関連する業務を行う場合は、専ら行わない限り、認められます。

【外国人本人の条件】

1.18歳以上であること

2.健康状態が良好であること

3.相当程度の知識若しくは経験を有していることが、試験等で証明されていること。

4.イラン・イスラム共和国以外の国籍であること

5.過去に「特定技能1号」のビザで在留していた期間がある場合には、通算の在留期間が5年未満であること

「3.」については、以下のⅰ.、ⅱ.又はⅲ.のいずれかの条件を満たしていることが必要です。

ⅰ.技能実習2号「介護職種・介護作業」を良好に修了していること

ⅱ.介護技能評価試験​、介護日本語評価試験​、日本語能力試験​(N4以上)等の3つとも合格

ⅲ.介護福祉士養成施設修了

(厳密にいうとまだあります。上記3つは主な条件です。)

介護分野に関しては、他の特定技能の産業分野と異なり、日本語能力試験(N4以上)等に加えて、介護日本語評価試験にも合格していなければなりません。​ただし、上記「ⅰ.」と「ⅲ.」の場合は、日本語能力に関して試験は免除されます。

また、特定技能「介護」に関しては、人数枠も定められています。これは「事業所」単位です。ABC法人がD支店、E支店、F支店を展開している場合に、D支店で特定技能外国人を雇用する場合には、そのD支店単位で以下に記載する人数を超えないことが条件となります。

[人数枠]特定技能1号で受け入れる外国人の数の合計が、日本人・「介護」の在留資格保持者、「介護福祉士としての活動を指定された特定活動の在留資格保持者、居住資格を有する介護職員の常勤介護職員の総数を超えないこと。

※常勤介護職員=労働日数が週5日以上、かつ年間217日以上であって、週労働時間が30時間以上の職員は原則としてその名称にかかわらずカウントします。

介護分野の特定技能には「2号」はなく、2023年4月下旬に示された技能実習・特定技能制度の制度改正の見直しの方向性でも、「介護」のみ2号は設定される予定がありません。これは、介護の場合には既に、上述の在留資格「介護」が存在しているため、2号が必要ないからです。特定技能1号による就業期間中に「介護福祉士」の資格を取得し、特定技能⇒介護へステップアップすれば、上限なしに日本で就労し続けることができます。

【特定活動について】

特定活動とは、既に設定されている在留資格ではカバーしきれない活動の類型について、法務大臣が相当と認めた場合に決定されるビザです。また、一部あらかじめ告示で定められている類型に関しては、入国審査官限りで「特定活動」のビザを付与することができます。(前者が告示外特定活動、後者は告示特定活動といいます。)

日本は、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国との間で経済連携協定(以下、EPA)を締結し、各国から介護福祉士候補者として、介護福祉士の資格を取得するために業務に従事することができる制度を設けています。

(定められている介護に関する活動の類型)

インドネシア⇒介護福祉士候補者、介護福祉士家族滞在

フィリピン⇒就労介護福祉士候補者、就学介護福祉士候補者、介護福祉士家族

ベトナム⇒就労介護福祉士候補者、就学介護福祉士候補者、介護福祉士家族

3国共通⇒告示外特定活動として「介護福祉士」

「候補者」は、一定の要件を満たす者が、一定の要件を満たす病院や介護施設等で介護福祉士になるために、そこで働きながら、又は就学しながらその知識や技術を修得し、介護福祉士の資格の取得を目指す者です。そして、候補者が無事に介護福祉士の資格を取得した場合には、その後も引き続き日本で就労することを目的としています。

また、この「候補者」は、上述の「特定技能」の人数枠での「常勤介護職員数」には含まれませんが、「候補者」が介護福祉士の資格を取得して「EPA介護福祉士」へ在留資格を変更した場合は、常勤介護職員にカウントされますので注意が必要です。

なお、上述「特定技能」及び「EPA介護福祉士候補者」のビザでは「訪問系のサービス(訪問介護)」に従事することはできませんが、「EPA介護福祉士」は、一定の要件の下で訪問介護サービスに従事することもできます。

ちなみに、「候補者」が介護福祉士の資格を取得した場合には、「介護」のビザ、特定活動「EPA介護福祉士」どちらのビザへも在留資格変更が可能です。

また、特定技能及び候補者としての特定活動では、家族滞在(配偶者又は子の在留)が認められませんが、介護とEPA介護福祉士は家族滞在も認められます。

以上、今回は「介護」に関係するビザの種類を比較しながら述べさせていただきました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。