長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。
今回は、「宗教」と「報道」という2つの在留資格について説明していこうと思います。この2つの在留資格(ビザ)は、いずれも「就労資格」(働くことができるビザ)ですが、技術・人文知識・国際業務や経営・管理等の就労資格とは異なり、「上陸許可基準適合性」が求められない在留資格です。つまり、在留資格該当性(日本で行うことができる活動内容)は定められていますが、その基準(学歴や職歴等)となるものが定められていません。
あまり業務としての依頼の多い在留資格ではありませんが、紹介させていただこうと思います。
では、順番に見ていきましょう。
【宗教】
在留資格該当性「外国の宗教団体から本邦に派遣された宗教家の行う、布教その他の宗教上の活動」
要するに外国にある宗教団体の意思により、日本で布教活動等を行うために日本に派遣された外国人宣教師等がこの在留資格に該当します。
なお、「外国の宗教団体」の意味は、必ずしも外国に本部等のある宗教団体又は外国起源の宗教団体である必要はありません。例えば、日本発祥のとある宗教団体で日本国内に本部を有する団体が、外国に支部を持っているような場合において、その外国にある支部の人事決定により、日本にある本部や支部等へ派遣して布教活動などを行わせる場合も、この在留資格に該当します。
日本で行う活動は「布教その他の宗教上の活動」とされています。これには、布教はもちろん、それに付随するあらゆる活動が含まれ得ます。例えば、日本で所属する宗教団体の意思に基づき、その宗教活動(仕事)の一環として行う講演や教会におけるミサその他あらゆる活動が考えられます。また、宗教上の活動を主として行っている限り、専らそのような活動を行うことは必要なく、例えば、宗教上の活動を行う合間に、仕事の一環として、施設内の清掃や管理、経理事務や一般事務を行うことも差し支えありません。ちなみに、いわゆる「修行者」と言われるような人も、「宗教上の活動」に当たり得ます。
ただし、「就労資格」であるので、そのような活動を行うことによって、日本で安定した生活を営めることが必要です。つまり、日本人同様に、一定程度以上の給料が得られる必要があります。
一方、宗教上の活動を行うことにより得られる一般的な報酬(いわゆる給料)とは別に、語学教育や慈善事業や講演などを業として行うような場合で、そのような活動に対して別途報酬が支払われるような場合は、資格外活動許可が必要となる可能性があります。ただ、「業として」行わなければ大丈夫です。「業として」とは、「同種の行為を反復継続する意思をもって」行うようなケースをいいます。そのため、例えば、たまたま知り合いから講演依頼を持ちかけられ、講演を行った謝礼として報酬を受けるようなケースで、明らかに反復継続するようなものではない行動に対しての報酬は、資格外活動を受ける必要はありません。(なお、1回限りの行為であっても「反復継続する意思」がある場合は「業として」行うものの判断される場合もあります。)
また、例えば、当初来日時には「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で来日し、しばらく会社で働いていたが、その後、とある宗教と出会い、信仰し、その宗教団体に加入して「宗教家」として活動するような場合も、その日本にある宗教団体への派遣が外国の宗教団体本部や支社の意思により行われるようなときは、日本に居ながら「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(ビザ)から「宗教」の在留資格(ビザ)への変更許可を受けることができます。
ちなみに、「宗教家」に該当するかどうかは、明確に定められてはいませんが、その所属する宗教団体において、当該外国人が一定の宗教上の地位にある者(司祭、神官、僧侶等)であれば該当するのが通常です。もちろん、肩書にかかわらず、行う活動に在留資格該当性があれば、一定の地位になくとも、許可されます。
【報道】
在留資格該当性「外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上の活動」
こちらは、簡単に言うと外国のメディアや新聞社等の特派員等を対象とする在留資格です。
「報道」の在留資格における「外国の報道機関」と上記「宗教」の在留資格における「外国の宗教団体」は意味が異なります。前者は、外国に本社等を有して、外国を基盤に報道活動を行っている機関を指します。従って、日本に本部のある報道機関の場合は、外国に支店・支社等を有していても、ここでいう「外国の報道機関」には含まれないと解されています(原則として)。
更に、形式的に外国に本部等があっても、日本での報道上の活動を行うことが主たる活動であるような場合も、「外国の報道機関」とは言えないといわれています。
「契約」については、雇用契約はもちろん、委任、請負、業務委託等何でもOKです。また、日本の機関との契約も必要がありません。例えば、外国にあるA新聞社が、フリーランスのB記者(もちろんA新聞社の社員でもOK)に、日本での取材活動を委任し、その委任契約に基づいて、B記者が来日し、取材その他の報道上の活動を行い、A新聞社から報酬を得るような場合も、「報道」の在留資格に該当します。
「報道上の活動」には、列挙されている取材活動はもちろん、記事を書いたり、報道に係る事件やインタビュー等を撮影したり、報道番組を収録したり、番組の編集作業をしたりすることも含まれます。また、報道番組に出演するキャスターやアナウンサーとしての活動も含まれます。なお、報道とは全く関係のないスポーツ番組やバラエティ番組の撮影や、それらに出演する者に関しては「報道」ではなく、「興行」の在留資格に該当します。
なお、「報道上の活動」を行っている限り、公的機関(国営・公営)であっても民間機関であっても「報道」の在留資格に該当します。また、「報道上の活動」を行うのであれば、報道機関に限らず雑誌社などでも該当します。
今回は、一般的になじみがあまりない「宗教」と「報道」という2つの在留資格(ビザ)について書かせていただきました。最後までお読みいただきありがとうございました。