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【第32回】在留資格の紹介~興行③~

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。

今回も前回から引き続き在留資格「興行」の説明のつづきなのですが、実は去る2023年5月31日に、「興行」の在留資格の基準が変更されました(2023年8月1日施行)。なんというタイミングで・・・と思いましたが、今回はその新基準について書いていこうと思います。

今回の改正で変更されたのは、前回も言及しました「演劇、演芸、歌謡、舞踊又は演奏(以下、演劇等といいます)の興行に係る活動」についての部分です。緩和される部分を増やすのが今回の改正の大きな部分です。なお、「演劇等以外の興行に係る活動」及び「興行に係る活動以外の芸能活動」の基準に変更はありません。

まず、今回の「演劇等の興行に係る活動」の基準変更を4段階に分けて説明していきます。

【第1段階:最も単純な基準】

申請人(「興行」の在留資格(ビザ)をもって活動する外国人の方本人)が行おうとする活動が、以下のいずれかに該当している場合は、その他の複雑な基準は適用されません。

1.国・地方公共団体・特殊法人等が主催する、又は小学校・中学校・高校・大学等で行われる興行

2.国や独立行政法人等の資金援助を受ける日本の会社等で、外国との文化交流に資するものが主催する興行

3.いわゆる外国の文化等を主とする広いテーマパークで行われる興行

4.非営利団体の施設又は客席部分の収容人数が100名以上である施設であって、かつ、客席で飲食物の有償提供及び客の接待をしない施設で行われる興行

5.1日の報酬額が50万円以上、かつ、30日を超えない範囲の滞在期間内で行われる興行

以上の5つのいずれかに該当する演劇等の興行に係る活動を行う外国人については、これ以上の細かな基準は定められていません。

なお、今回の改正で「4.」と「5.」において一部緩和されています。

★「4.」の「客席部分の収容人員が100人以上」は、改定前は「客席の定員が100人以上」でした。客席が100席以上なくても、興行等を観覧するスペースの収容可能人数が100人以上の施設であれば席が100以上なくでもOKという風に緩和されました。

★「5.」の「30日を超えない範囲」は、改正前は「15日を超えない範囲」でしたので、少し滞在を長くすることができるようになりました。これに伴い、許可される在留期間の範囲も「15日、3か月、6か月、1年、3年」から「30日、3か月、6か月、1年、3年」に変更されています。(つまり、15日間という在留期間は存在しなくなり、最低でも30日以上の在留期間が許可されるという意味。)

【第2段階:緩和された条件】

第1段階のいずれにも該当しない場合でも、次のいずれかの条件にも該当すれば、この第2段階の条件を満たせば許可され得ます。

①興行を行う施設が、風営法第二条第一項第一~第三号までに掲げる営業を行っている施設でないこと。

②申請人が、一定の基準を満たす日本の企業等(機関等)との契約に基づいて活動を行うものであること。

「➀」は、いわゆるキャバクラの他、大人向けのバーなどはこの基準に適合しないことになります。

「②」の「一定の基準」は、以下の4つです。

1.外国人の興行に係る業務につき3年以上の経験を有する経営者又は管理者がいる機関等であること。

2.当該機関等(経営者、常勤の職員)が、一定の犯罪行為又は不適切行為を行ったことがないこと。

3.過去の興行において外国人に対する給料未払いが一切ないこと(過去3年間)

4.その他、外国人の興行を適切に行う能力を有していること。

※この「第2段階」は、この改正の目玉で、新たに新設された基準です。これは、一定の信頼のある機関や施設であれば、条件を緩和してほしいという業界の声にこたえたものです。

★「1.」では、例えば開業したての機関等であっても、そこの経営者又は管理者個人が、3年以上の外国人の興行に係る業務に従事した経験を持っているのであれば条件を満たし得ると考えられます。

★この「1.」~「4.」までの条件は、外国人と契約を結ぶ日本の企業等が満たすべき条件であり、後述の第3段階・第4段階と違い、その興行が行われる施設自体の要件が別段定められていないところが大きな点です。例えば、外国人AさんがB株式会社と契約を結び、Cホールでコンサートする場合においては、この基準は、B株式会社が満たすべき条件ということです。

【第3段階:厳しめの基準】

申請人が行おうとする活動が、第1段階・第2段階に該当しない場合、その活動が次の(1)~(3)のいずれにも該当していることが必要です。

(1)経験要件【いずれかに該当要:興行の報酬が1日500万円以上の場合は該当する必要なし】

・外国の教育機関での当該興行に係る活動に係る科目の2年以上の専攻経験

・2年以上の外国における経験(プロの芸能人として行った経験でないとダメ)

(2)契約機関要件

・外国人と契約を結ぶ機関が、申請人に月額20万円以上の報酬を支払う義務を負う契約(以下、興行契約)を締結すること【風営法第二条第一項第一号(キャバクラなど)を除く、外国の民族料理を主たる商品として展開する飲食店で、申請人が月額20万円以上の報酬を受けて、当該外国の民族音楽の歌謡、舞踊、又は演奏を行う場合を除く。】

以上の契約に基づいて、申請人が契約する機関が以下のすべての条件を満たすこと。

1.外国人の興行に関する業務につき3年以上の経験を有する経営者又は管理者がいること

2.5名以上の常勤の職員がいること

3.当該機関の経営者又は常勤の職員が一定の犯罪行為又は不当行為をしたことがないこと。

4.過去の興行において外国人対する給料未払いが一切ないこと(過去3年間)

(3)施設要件(興行を行う施設の要件)

・興行が行われる施設が、つぎの全要件に該当すること【その施設で興行を行う「興行」の在留資格保持者が申請人以外に居ない場合は、下記の「6.」のみに該当すればよい】

1.不特定かつ多数の客に対して外国人の興行を行う施設であること。

2.13㎡以上の舞台があること

3.9㎡以上の出演者用の控え室があること(出演者が5名を超える場合は更に条件あり)

4.従業員の数が5名以上であること

5.当該施設を運営する機関の経営者又は当該施設に係る業務に従事する常勤の職員が、一定の犯罪行  為や不当な行為を行ったことがないこと。

★以上の(1)外国人自身の経験要件、(2)外国人と契約を結ぶ日本の機関の要件、(3)興行を行う施設の要件、この3つをすべて満たさなければなりません。

★「1.」は、会員制クラブなど排他的なものを排除する規定です。

★「5.」は、興行を行う「施設」の「経営者又は常勤の職員」に関する条件であり、外国人と契約を結ぶ「機関」の「経営者又は常勤の職員」との違いに注意が必要です。後者の範囲は、その「機関」に属するすべての経営者及び常勤の職員に及びますが、前者の「常勤の職員」については、「当該施設に係る業務に従事する常勤の職員」のみが対象とされています。従って、当該施設を運営する機関が、当該施設の運営以外にもいろいろな事業を展開しているような場合においては、この施設に係る業務に従事していない常勤の職員がこの基準に適合しないからと言って「基準を満たさない」とは判断されません。

【第4段階:最も厳しい基準】

これは、「風営法第二条第一項第一号に掲げる営業を行う施設」で演劇等の興行に係る活動に従事する場合です。この場合は、上記「第3段階」の「(3)施設要件」に次の2点の基準が追加されます。

1.客の接待専用従業員が5名以上いること

2.「興行」を持って在留する申請人(外国人)が客の接待に従事することがないと認められること

★風営法第二条第一項第一号の条文は「キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業​」です。こういった形態のお店で興行を行う為には厳しい基準が設けられているということです。

★「1.」は、下記「2.」に関連しますが、客の接待を行う従業員が最低限確保されていないと、申請人である外国人がそれを行うのではないか?と疑われ得ます。そのおそれがないよう、設けられた最低基準の要件と思われます。

★「2.」は、要するに「興行」の在留資格をもって上陸した外国人(申請人)は興行に係る活動をするために上陸しているにもかかわらず、その外国人が客の接待(客の横に座っておもてなしする等)を行うようなことが万が一にもあってはならないため、そこを規制するための基準です。その疑いがある場合は、その疑いをつぶすための資料や書類の作成・提出が必要になります。

以上、3回にわたり書いてきました「興行」の在留資格(ビザ)に関してでした。今回は、執筆中に基準が改定されているのに気づき、若干右往左往した内容になってしまい申し訳ございませんでした。

最後まで読んでいただきまして本当にありがとうございました。