長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。
今回は、原点に立ち返るようなテーマですが、「在留資格認定証明書」というものについて、その内容や基本的事項、注意事項などについて書いていこうと思います。
まず、「在留資格認定証明書」というものが何なのかについて説明いたします。
在留資格認定証明書とは、その時点で日本に住んでいない外国人の方が、日本で中長期的に生活するために出国に先立って取得する証明書です。その目的は、就労はもちろん、日本人との結婚や血縁関係によるものまでさまざまです。
本来、海外から日本に来た外国人は、到着した日本の出入国港(空港や港)で、日本に入国(正確には上陸)するための審査を受け、その審査で合格(許可を取得)すれば、晴れて日本に上陸できます。(図1)
【図1】外国にて査証取得 ⇒外国出国 ⇒日本到着 ⇒上陸審査 ⇒許可 ⇒上陸
しかし、これから日本において中長期的に生活する外国人の方を受け入れるための審査はとても複雑なものとなり、時間がかかります(「図1」の「上陸審査」で時間がかかる)。なぜなら、間違ってもテロリスト等の不適切な人間を受け入れてしまっては日本の安全・安心を阻害するおそれがあるからです。もし、外国人の方が到着するたびに、「図1」のような流れで毎回審査していたら、一生仕事が終わりませんし、現実的ではありません。
そもそも、法務省のホームページに掲載されている在留資格認定証明書交付申請の標準処理期間(その審査を受け付けてから終了するまでの標準的な期間)は1か月~3か月とされており、日本に到着した外国人を1か月~3か月待機させておく場所もなければ、そのような長期間にわたって行動を抑制すれば人道上の問題として国際問題に発展しかねません。
そこで、この「在留資格認定証明書」という制度が取られています。次の「図2」がその流れです。
【図2】 ❶日本にて在留資格認定証明書交付申請⇒❷認定⇒❸外国にて査証取得⇒➍外国出国⇒❺日本到着⇒❻簡易な上陸審査⇒❼許可⇒❽上陸
つまり、在留資格認定証明書制度は、わかりやすく言うと「上陸の事前審査」と言えます。
要するに、日本に上陸しようとする外国人の方は、外国を出国する前に、日本の法務省(正確には所轄地方出入国在留管理局)に対して「在留資格認定証明書交付申請」をします(図2の➊)。
それが認められると「在留資格認定証明書」が交付されます。それも持って、外国の在外公館(日本大使館や日本領事館)に入国するための査証申請をします。この査証が、ビザです。(図2の➋・❸)
無事ビザが発行されたら、そのビザが貼り付けされている旅券(パスポート)と在留資格認定証明書をもって日本に向けて出発です(図2の➍)。
日本に到着したら、上陸審査の際にパスポートを在留資格認定証明書(原本)を提出し、問題がなければ許可されて、無事上陸、という流れになります。
つまり、在留資格認定証明書を取得することによって、図2の❻の上陸審査にかかる時間が圧倒的に短くなるのがメリットです。
ちなみに、在留資格認定証明書は必ず必要か?と問われると、法上は「いいえ」という回答になります。ただし、高度専門職・特定技能(1号・2号)の2つの在留資格については、在留資格認定証明書の取得が必須です。ですが、上記で述べた理由により、取得は必須といっていいと思います。
なお、日本に短期間旅行に来る外国人の方の多くは、在留資格認定証明書を取得していません。彼らは、「短期滞在」(観光ビザ、短期商用ビザ、知人親族訪問ビザ等ともいわれます)という在留資格で来日しています。この「短期滞在」は、在留資格認定証明書の交付の対象外となっています。また、多くの国との国際約束や条約等により、「短期滞在」に関しては「査証(ビザ)」を必要としない、と取り決められている場合もあります。そのような国から日本に観光に来る外国人の方は、パスポートだけで日本に上陸することができます。
私たち日本人が、ヨーロッパのいくつかの国やタイ、ベトナム等に旅行に行く場合も、同様の理由により査証を取得せずとも、パスポートだけで入国が可能なのは、このような制度があるからです。
ここまでで、必ずわいてくる疑問として「外国にいるのにどのように日本で在留資格認定証明書の交付申請をするのか?」というものがあると思います。
答えはオンライン申請でしょうか?
いいえ、違います。2023年5月現在、オンライン申請は日本国内のみしか対応していないため、外国から申請することはできないことになっています。
答えは、申請代理人です。
在留資格認定証明書の交付申請をはじめ、他の在留関係諸申請は「本人申請」が原則です。しかし、在留資格認定証明書の交付申請の場合は、申請人である外国人本人が日本国外にいることが普通なので、この申請に限っては、例えば申請人が日本で働く会社の職員などが、申請代理人となって、本人に代わって申請することができます。企業が新たに外国人社員を採用した場合などは、その会社の職員が代理で申請できます。もちろん、我々行政書士が取次申請することも可能です(外国人本人⇒会社の社員⇒行政書士へ依頼OK)。
なお、注意点としては、在留資格認定証明書交付=査証取得ではないということです。よっぽど問題がない限り、在留資格認定証明書が交付されれば、外国での査証申請はスムーズにいきますが、何か問題が生じた場合(交付後に犯罪歴があったことがわかった、日本側のルールは守ったが本国側で定められているルールに違反していた等の場合)には、査証(ビザ)が下りないこともあります。(もっともこのような場合は、在留資格認定証明書交付そのものが取り消される場合もあります。)
この在留資格認定証明書は、立派な紙によって作られ、紙ベースのものでしたが、2023年3月より、電子メールでの受け取りも可能となりました。現在は、紙ベースのものとメールのものが併用されています。
メールで受け取ることのメリットは、紛失のおそれがないこと、早いこと、費用が掛からないことです。デメリットは、メール自体を削除してしまった場合めんどくさいこと、苦労をして取得した認定証明書なのにメールの簡単な文面のみで達成感がないことなどですかね。
【メールの場合の流れ】
申請⇒許可⇒指定したメールアドレスに認定内容が届く⇒そのメール画面を査証申請時に提示⇒査証発給
以上、今回は「在留資格認定証明書」について書いてみました。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。