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【第37回】在留資格の取消制度

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。

今回は、「在留資格取消制度」について書いていこうと思います。

日本に在留する外国人は、原則として、必ず「在留資格(ビザ)」を所持している必要があります。裏を返せば、在留資格を持っていない外国人は、不法滞在となってしまいます。

国籍に関係なく、すべての外国人と共生を図り、住みやすい素敵な日本を作っていくことが、日本にとっても目指すべき姿であることは疑いの余地がありません。しかし、実際には、日本に在留する外国人が、違法な行為をするなど、その外国人をこのまま日本に在留しておくことが日本にとって適切ではないという状況が生じる可能性があります。

そのような事態が発生したときに、入管法では、日本の安全・安定を維持する観点から、2つの制度を設けています。1つが「退去強制制度」、もう一つが、今回のテーマである「在留資格取消制度」です。重さで言うと「在留資格取消」<「退去強制」です(在留資格取消より退去強制の方が重い処分です)。

なお、出国命令制度というのもありますが、広い意味で退去強制制度の特例(一部)ともいえる制度なので、「2つの制度」と言わせていただいています。

「在留資格取消制度」とは、上陸許可等を受けて在留資格を保持している外国人に、一定の違反行為等があったときに、その外国人が「現に有する」在留資格(ビザ)を取り消し、その効力を失わせる制度です。「現に有する」を強調したのは、例えば、留学生として「留学」の在留資格認定証明書を取得し、上陸して学校に通っていいた者が、その学校を卒業後に、そのまま日本で就職し、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更しているとします。しかし、その者が、最初に留学で上陸する際に、上陸拒否事由に該当する事実を隠して上陸許可を受けていたことが判明したとします。このような場合、取り消しの対象となる在留資格は、虚偽により取得した「留学」ではなく、「現に有する」=「今現在持っている」在留資格、つまり、「技術・人文知識・国際業務」となるという解釈だからです。

では、どのような場合に「在留資格取消」の対象となるのでしょうか。在留資格の取消しの原因となる事実(以下、在留資格取消事由)は、大きく分けて3つのタイプに分かれます。

①偽りその他不正の手段で上陸許可等を受けたこと

➁所持している在留資格に対応する活動を行っていないこと

③中長期在留者が、一定の届出義務を行っていないこと。

 

【①偽りその他不正の手段で上陸許可等を受けたこと】

これは、嘘をついて在留資格認定証明書を取得したり、在留資格変更許可申請を受けたことはもちろん、それらの申請等の手続で提出・提示した書類等に虚偽・不実の記載があった場合も含まれます。上記の具体例は、この部分に引っかかっているため在留資格取消事由に該当しています。

さらに、例えば、外国人が雇用されている企業に必要書類を要求し、企業側がそれを外国人に渡し、それを外国人が在留諸申請手続きの添付書類として入管に提出したとします。外国人の方は、その書類が真実の内容であると信じて提出しますが、実は、その書類の内容が不実であったとします。このようなケースでも、つまり、外国人の方本人に非がないケースでも、在留資格取消事由に該当し得るので、注意が必要です。

 

【②所持している在留資格に対応する活動を行っていないこと。】

高度専門職2号以外の別表第一の在留資格(主に就労資格)を持って在留している外国人の方は、継続して3カ月以上

高度専門職2号の在留資格を持って在留してる外国人の方は、継続して6カ月以上

日本人の配偶者、永住者又は特別永住者の配偶者の外国人の方は、継続して6カ月以上

それぞれの在留資格に対応する活動を行っていないと、在留資格が取り消されてしまう可能性があります。

例えば、日本人と結婚して、日本人の配偶者等の在留資格(ビザ)をもっている外国人の方が、日本人と離婚した場合、その後、何の手続きもせずに6か月を超えて日本に在留していることが判明した場合や、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持って日本で就労している外国人の方が、その会社を退職し、再就職活動や必要な手続きをすることなく3カ月を超えて日本で在留継続していることが判明した場合等が具体例です。

【③中長期在留者が、一定の届出義務を行っていないこと。​】

中長期在留者である外国人の方には、日本人には必要とされない「届出」義務が課されています。

その届出について、これを行わない、又は虚偽の届出をした、場合に在留資格取消事由に該当することになります。

例えば、

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で就労している外国人の方が、A株式会社からB株式会社に転職した場合には、「契約機関に関する届出(契約機関の変更)」というものが必要になります。

「日本人の配偶者等」の在留資格を持って在留している外国人が、日本人の配偶者と死別した場合には、「配偶者に関する届出」が必要になります。

上記のような「届出」を行っていないことが判明した場合も、在留資格取消事由に該当し、在留資格が取り消されてしまう可能性があります。

ちなみに、法務大臣は、仮に外国人が在留資格取消事由に該当することが判明した場合でも、必ず在留資格を取り消さなければならないわけではありません(裁量がある)。

なお、もし、在留資格が取り消された場合、通常は、30日を超えない範囲で「出国期間」というものが定められ、その期間内に出国準備をし、出国することになります。

なお、この出国期間内に出国すれば、在留資格を取り消されたことを理由とする上陸拒否事由に該当しないため、日本への再入国は早期に可能ですが、この出国期間を過ぎても日本に残ってしまうと「退去強制事由」に該当してしまい、5年間(最悪10年)日本に入ることができなくなります。

 

以上、今回は「在留資格取消制度」について書きました。

最後までお読みいただきありがとうございました。