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【第39回】宿泊業における在留資格の決定

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士、竹内です。

今回は、ホテルや旅館などの宿泊業という業種で外国人の方を雇う場合の在留資格(ビザ)の決定(選択)について書いていこうと思います。

まず、宿泊業において外国人の方を雇うということを考えた場合に、その際に取得することができそうな在留資格は、①技術・人文知識・国際業務、②特定活動告示46号(本邦大学卒業者)、③特定技能、④技能実習の4つになるかと思います。

なお、旅館やホテルを経営する場合は「経営・管理」又は「高度専門職1号ハ」のいずれかになります。

【それぞれの在留資格でできる仕事内容の】

①技術・人文知識・国際業務

「本邦の公私の機関との契約に基づいて、理学、工学その他の自然科学又は法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を必要とする業務、または外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動。」

・この技術・人文知識・国際業務という在留資格(ビザ)は、簡単に言うと大学卒業相当の専門的知識・技術がないと行うことができない業務に従事するための在留資格です。

・これを勘案してみると、この在留資格において宿泊業で雇う外国人が従事することができる・できない業務は以下のとおりです。

★できる仕事

・専門的な知識・技術を活かした宿泊施設におけるマーケティングや集客方法の考案・実施、専門的知識と旅行関係の知識を生かしたホームページの作成・管理業務、宿泊客誘致のための企画の考案、従業員及び業務管理、外国人旅客に対する外国語による応対及び施設案内、その他いわゆる総合職としての仕事。

・なお、最終的に上記のような業務を行うことを前提に、いわゆる「新入社員研修」等の研修の一環として、日本人の大卒者等と同様に、一定期間、レストランサービスやフロントスタッフとしての業務に従事することは、合理的な説明があり、かつ、それを入管が認めれば問題なくできる。

★できない仕事

・専ら、荷物運び、客室・館内清掃、レストラン施設でのホールスタッフ業務、単純なパソコン入力作業、外国人がほとんど来ないホテルでのフロント・接客業務など大学等において学んだ知識・技術又は外国人としての思考・感受性を必要としない者でも従事することができる仕事は認められません。

★微妙なライン

・ホテルマンとしての業務は、接客=単純作業とみなされる場合もあるが、ホテルの規模やそのホテルにおけるフロントの重要性等を考慮して、認められる場合もある。

 

②特定活動告示46号(本邦大学卒業者)

・本邦の大学(大学院)を卒業(修了)し学位を授与された者が、本邦の公私の機関との契約に基づいて当該機関の常勤の職員として行う当該機関の業務に従事する活動(日本語を用いた円滑な意思疎通を必要とする業務を含み、風俗営業活動又は法律上資格を有する者が行うこととされている業務に従事するものを除く)

・この在留資格は、大学・大学院を卒業した者が大学等で学んだ知識や応用的能力、日本語を生かして働く場合に認められる在留資格で、「①技術・人文知識・国際業務」と比べ現業性が高い業務にも従事することができます。

★できる仕事

・日本語を生かしたフロント業務、レストランでのホールスタッフ、外国人スタッフの代表として日本人上司による指示を通訳し、外国語により他の外国人スタッフに伝達・指導しながら客室等の清掃業務従事する業務など

★できない仕事

・単に客室・館内の清掃やベッドメーキングのみに従事する活動、特段日本語によるコミュニケーションを必要としない環境の中レストランでの皿洗いに従事する活動など

 

③特定技能(1号・2号)

・宿泊施設におけるフロント、広報、宣伝、接客、レストランサービスの提供その他の宿泊サービスの提供に係る業務

・下記「④」の技能実習同様に1号の場合は「5年間」という在留期間の上限がありますが、先日新たに創設された「特定技能2号」に変更(UPグレード)することができれば、更新は必要となるものの、在留期間の上限なく日本に在留することができます。

★できる仕事

・上記に掲げた「フロント、広報・・・・その他の宿泊サービスの提供に係る業務」に「まんべんなく」従事することが必要です。

★できない仕事

・フロントのみ、広報のみ、レストランサービスのみというように、特定技能の対象業務であっても、それのみに従事するようなことは認められていません(あくまでも、まんべんなく上記の業務を行うことが求められます。)。

 

④技能実習(1号~3号)

・技能実習生の本国において修得等することが困難な業務であって、日本で学んだ技術等を本国に持ち帰って、本国の発展のために尽くすことを目的として作られた制度(在留資格)。

・いわゆる現業作業に近い形の業務に従事できるが、最大でも3年間という期限付きの在留資格です(ただし、技能実習2号終了後、特定技能へ移行することができれば更に5年間在留可能)。

★できる仕事

・接客(利用客の送迎や体が不自由なお客のお手伝い等含む)、チェックイン・アウトの補助、食事のための会場準備・テーブルセッティング、食事・飲み物の提供、利用客の安全管理・衛生管理等

★できない仕事

・技能実習という在留資格の目的から鑑みて、逆に専門性の高い①技術・人文知識・国際業務に掲げるような仕事はできない。(それをできる能力があり、かつ、上陸許可基準を満たせるなら技能実習で就労する必要がない)

・また、上記「★できる仕事」の中に入っている仕事であっても、例えば「衛生管理」という名目で、客室の清掃のみに従事させ続けたり、レストランサービスのみに従事させ続けることはできません。技能実習は、「技能実習計画」というものが定められ、その計画通りに技能実習を進めなければなりません。つまり、技能実習計画の範囲外の仕事を行わせるようなことがあってはなりません。

 

以上のように、宿泊業については様々な在留資格(ビザ)で従事することができます。しかも、上記を読んでいただいても「境界があいまいだ」と思われるかと思います(とくに上述のホテルマン等)。②の特定活動告示46号、③の特定技能ができたことにより、①の技術・人文知識・国際業務と相まって、その境界線があいまいになったのは事実です。専門家であっても、判断が難しいケースが多々あります。

イメージとして、専門的技術・知識の必要性が高い順に、

技術・人文知識・国際業務 > 特定活動告示46号 > 特定技能 > 技能実習

というような感じですね。

宿泊業において外国人の方を雇う場合は、場合により慎重に検討することが必要となりますので、そんなときは専門家を頼ってくだされば幸いです。

以上、今回は「宿泊業における在留資格の決定​」について書きました。

最後までお読みいただきありがとうございました。