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【第54回】特定技能分野別解説⑪~飲食料品製造業分野~

長久手市の在留資格(ビザ)専門行政書士の竹内です。

あっという間に12月ですね。昔からよく聞く話ですが、年を取るにつれて時間が経つのが早く感じる、ということを実感しております。今後、更に早くなると思うと怖いですね。地球の歴史からすれば、1人の人間の一生など瞬きと同じくらいの短さであるということは真実ですね。

ということで、今回も以前から継続中の特定技能の在留資格(ビザ)の分野別解説シリーズの第11弾ということで、「飲食料品製造分野」について書いていきます。

【特定技能外国人が従事することができる仕事内容】

☆主たる業務☆

特定技能1号 → 飲食料品(酒類を除く。)の製造・加工及び安全衛生の確保

特定技能2号 → 上記の業務及びその管理業務

対象となる業務の例:原料の処理、加熱、殺菌、成形、乾燥等の一連の生産行為等(製造・加工)

使用する機械の安全確認、作業者の衛生管理等、業務上の安全衛生及び食品衛生の

確保に係る業務(安全衛生の確保)​

対象とならない業務の例:単なる選別、包装(梱包)のみ

※特定技能外国人は、上記の業務に幅広く従事することが求められます。従って、原料の処理・加熱業務のみに従事し、​機械の安全確認などの業務には従事しないなどは認められません。

※なお、飲食料品製造業分野においても、当該業務に従事する日本人が日常的に従事している関連業務に付随的に従事することは差し支えありません。関連業務の例としては、原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の管理作業等が上げられています。

従って、特定技能外国人が出社後主たる業務に従事しつつ、その合間や作業終了後に現場の清掃や、原料の仕入れ業務、備品のチェック等に付随的に従事するような働き方は全く問題ありません。

※特定技能2号は、「熟練した技能を要する」在留資格(ビザ)です。主たる業務の「管理業務」としては、衛生管理、安全衛生管理、品質管理、納期管理、コスト管理、従業員管理、原材料管理等が上げられています。従って、特定技能2号で業務に従事する外国人は、複数の従業員を指導し、あるいは、コスト管理、衛生管理の責任者としての管理業務を中心に行いながら、特定技能1号の主たる業務、つまり、原料の処理や加熱、使用機械の安全確認などの業務にも従事することができる人材でなければなりません。

※また、特定技能2号の在留資格(ビザ)で業務に従事する外国人は、当該事業所の責任者の補助者としての役割が求められるため、主任、係長等の役職等を命じたうえで雇用することが必要になります。

 

【外国人本人の条件】

☆特定技能1号☆

①以下の技能水準試験の合格​

​・飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験

➁以下の日本語能力試験の合格

・国際交流基金日本語基礎テスト又は日本語能力試験N4以上

☆​特定技能2号☆

①以下の技能水準試験の合格​

・飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験

➁以下の実務経験

・飲食料品製造業分野において複数の作業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者としての2年以上の実務経験。

※この実務経験要件に関しては「令和5(2023)年6月9日の運用要領改正の時点で、飲食料品製造業分野の1号特定技能外国人として本邦において就労している期間が2年6か月を超える者については、運用要領改正の翌日以降特定技能1号の在留期間上限の日までの日数から6か月を減じた期間を目安とした管理等実務経験を積んでいること」という注意書きがあります。

要するに、2020年6月9日から特定技能1号の在留資格(ビザ)をもって働いている外国人は、2023年6月9日の時点で、既に3年働いていることになります。この場合、この外国人の方の在留期限(MAXで特定技能1号の在留資格で日本に滞在できる期限)が2025年の6月8日となります。​そこから6カ月を減じた日、つまり、2024年12月8日を目安とする、つまり、この場合は必要となる実務経験は2023年6月9日-2024年12月8日=約1年6カ月となります。

※なお、​特定技能2号については、今後、制度改正により日本語能力要件が課される可能性が高く、日本語能力試験N3以上の試験合格が必要となる見通しです。

 

【事業所の要件】

①日本標準産業分類に掲げる産業の内主として次のいずれかに掲げるものを行っていることが必要です。

一 中分類09-食料品製造業
二 小分類101-清涼飲料製造業
三 小分類103-茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
四 小分類104-製氷業
五 細分類586一-菓子小売業(製造小売)
六 細分類5863-パン小売業(製造小売)
七 細分類5897-豆腐・かまぼこ等加工食品小売業​

※この要件は、事業所要件です。事業主に係る要件ではない点に注意が必要です。つまり、大企業である食品製造業大手のA株式会社のB事業所で特定技能外国人を雇用する場合において、A株式会社の主要な業務は飲食料品製造業であっても、B事業所においてはその業務は行っておらず、飲食料品小売業を主として行っているような場合は、特定技能外国人を受け入れることができません。​

※2つ目の注意点は「主として」​という部分です。つまり、その事業所における主要産業が、上記に列挙した業務に該当しなければなりません。従って、例えば複数の産業を同一の事業所において行っている場合には、その事業所の主たる業務は、生産された製品の直近の売上高によって判断され、これらの中で最も大きな割合を占めるものとされるのが原則です。ただし、例外的に自社製品の製作などで、売上高だけで判断するのが適当でない場合には、製品の産出額、販売額やそれに要した従業員数等で判断する場合もあるでしょう。

※セントラルキッチン、プロセスセンターなども対象となります。

※スーパーマーケットのバックヤード等で食品製造を行う場合は、原則としては対象となりません。なぜなら、通常はそれが主たる業務とはなり得ないからです。バックヤードで製造した製品の売上高が一番あり、それがその店で主たる売り上げを上げているのであれば対象になる可能性もあるかもしれませんが、原則として対象外です。

​※製造小売(自分で作って、その場で自分で売る)については、対象となります。パンを作って、その場で売ったり、ケーキを作ってその場で売る場合は対象となります。もちろん、対象産業以外の製造小売は除きます。

※製造請負​も対象となりますが、その事業場で箱詰め作業や荷物の発送に関する業務のみに従事したり、派遣社員として派遣する場合は当然対象外です。(特定技能で派遣が認められるのは、農業と漁業のみです。)

対象外の典型例:酒類製造業、塩製造業、医薬品製造業、香料製造業、飲食料品卸売業、飲食料品小売業(上記の五、六及び七を除く)、ペットフード等の飼料製造業など​

【特定技能所属機関(受入機関)等の要件】

①農林水産省、関係業界団体その他の関係者で構成される当分野における協議会の構成員になること。

②↑の協議会が行う調査、情報の共有その他の活動に対し、必要な協力を行うこと。​

​③ 農林水産省の調査、指導その他の活動に対しても、必要な協力を行うこと。

④登録支援機関に全部委託する場合は、当該登録支援機関も①~③の条件を満たすこと。

⑤​特定技能外国人に対して、キャリアアッププランのイメージ(キャリアルート、昇給の条件、昇給等に要する標準期間等)をあらかじめ設定し、雇用契約を締結する前に書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供して説明すること。

⑥特定技能外国人から在職証明書等の交付を請求された場合は、拒まないこと。

⑦直接雇用すること(派遣等不可)

など​

 

※以上、特定技能の在留資格(ビザ)の「飲食料品製造業分野」についての分野別解説でした。意外と広い範囲までカバーしているんですね。ただし、安易に対象であると考えると危険かもしれない分野なので専門家としてもしっかりと確認が必要となります。

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。