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【第89回】遺言執行者

長久手市の在留資格(ビザ)&終活関連(相続、遺言、成年後見、死後事務等)業務専門行政書士の竹内です。

8月も最終週ですね。そして、これからは10月まで台風の季節です。長久手近郊は、あまり台風が直撃するような場所ではないのですが、今年も何事もなく「普通」に過ぎてくれることを祈ります。

というわけで、今週も行きましょう。

 

今回も、まだまだ続きます「終活シリーズ」です。今回は「遺言執行者」について書いていこうと思います。その意味から、基本的な事項、具体的事例等交えて、民法を勉強したことのない方でも、何となく全体像が分かるような内容にしていきたいと思います。

 

【遺言執行者とは何??】

遺言執行者とは、文字どおり、ある亡くなった方の遺した「遺言」の内容を「実現する」ための人です。

つまり、書面等に残された遺言者(亡くなった方で、その遺言を書いた人)の意思を、現実にする役割を任せられた人のことを「遺言執行者」といいます。

 

【遺言執行者はどうやって選ぶの?】

遺言執行者は、原則として、遺言者がその遺言で指定します。

また、直接指定せずに、第三者への「指定の委託」を遺言ですることもできます。例えば、Aさんが「自分が亡くなった場合は、弁護士のBさんに遺言執行者を選んでほしい」という趣旨で遺言を遺したとします。この場合、弁護士Bさんは、遺言が効力を生じた時(Aさんが亡くなった時)、遅滞なく、遺言執行者を指定して、その人に通知してやってもらえるかどうかを確認することになります。

例外的なものとして、遺言執行者が必要なのにもかかわらず、遺言執行者も遺言執行者の指定の委託もされていないような場合は、利害関係人(相続人や受遺者等)が家裁に申し立てて、遺言執行者の選任をお願いすることができます。

 

【遺言執行者って誰でもなれるの?】

遺言執行者は、原則誰でもなれます。弁護士や司法書士、行政書士等の法律の専門家でなくともなれます。

ただし、「未成年者」と「破産者」の2パターンに該当する人だけは遺言執行者になることができません。

 

【遺言執行者って必要なの?】

遺言執行者は、原則としては「必要」ではありません。

ただし、以下のようなケースでは、遺言執行者が「必要」となります。

・推定相続人の廃除又はその取消しを遺言でする場合

・遺言で「認知」する場合

推定相続人の廃除とは、簡単に言えば、(兄弟姉妹を除く)推定相続人(被相続人が死亡した場合に、相続人となる権利を持っている人)の中に被相続人(亡くなった人)に対して虐待した人などがいる場合に、被相続人がその者を相続人から除外することができる、という制度です。

この推定相続人の廃除は、生前でももちろんできますが、遺言によってもできます。この場合は、被相続人が亡くなった後、遺言執行者は、その手続きをしなければならないと民法に明記されているため、遺言執行者が必須となります。

認知に関しても、民法ではなく戸籍法により、遺言執行者が就職の日(遺言執行者に就任した日)から十日以内に手続きをせよ、と書いてあるので遺言執行者が必要となります。

 

【遺言執行者への報酬はどうなる?】

まず、報酬は必須かという問題ですが、必須ではありません。

例えば、遺言執行者に親族(遺族)等を指定する場合は、無報酬とすることが多いようです。

しかし、いわゆる専門職(弁護士、司法書士、行政書士等)に依頼する場合は、当然ながら報酬が必要となります。その額は、遺産総額や手続きの猥雑さ、その他さまざまな状況によって異なりますが、安くはありません。

では、報酬はどのように決めるのでしょうか?これには大きく2パターンあります。​

① 遺言者が遺言で報酬額を定める方法

② 家庭裁判所が相続財産の額等を考慮して定める方法

①の方法であれば、あらかじめ決まっているので、ドキドキせずに業務終了を待つことができます。

②の方法は、業務終了後に申し立てて家裁に報酬額を決めてもらうので、いくらになるかわからないというドキドキはあります。ただ、家裁の中でも基準はあるでしょうから、バカみたいな金額になることはないでしょう。

※ちなみに、遺言の執行に必要となる費用(手数料、交通費等遺言の内容を実現するために必要となる実費費用)については、民法で「相続財産の中から支払いなさい」と定められています。

 

【遺言執行者の実際の仕事】

遺言執行者は、被相続人(遺言者)が亡くなった後、その連絡を受けて就職を承諾した時からその任務を直ちに開始します。

以下のような仕事があります。

・相続人の確定(戸籍謄本の蒐集)

・遺言の内容を相続人全員へ通知する。

・公正証書遺言又は自筆証書遺言保管制度を利用している自筆証書遺言以外の遺言形式の場合は、家庭裁判所への検認手続(これをしないて遺言執行手続きを開始すると5万円以下の過料の罰則あり。)

・相続財産の目録(現金・預貯金がいくらあるのか、どのような不動産があるのか等、相続財産全体像が分かるようにしたもの)を作成し、相続人全員に交付。

・実際の相続手続き(預貯金口座の解約や名義変更、マイルの名義変更手続き、株式の手続、不動産の移転登記等)

・終了した場合の、通知(業務終了通知)

 

以上、今回は亡くなった方の最後の意思を実現するために重要な役割を担う「遺言執行者」について書いてきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。